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2018-07-05 00:00
米に北の「非核化」に対する懐疑論
杉浦 正章
政治評論家
どうもおかしいと思っていたら、米大統領トランプと北朝鮮労働党委員長金正恩の米朝首脳会談での非核化合意は、危うい土台の上に築かれた砂上の楼閣であった可能性が強まっている。米国内で北朝鮮の非核化の意思を疑問視する報道が相次いでいるのだ。トランプも気まずいのか、国務長官ポンペオを5日北朝鮮に派遣する。この訪朝は一種の仕切り直し的な色彩を濃くしている。ポンペオは帰途日本に立ち寄り首相・安倍晋三や外相河野太郎と会談し、日米韓外相会談も開催する。歴史的に米国は過去二人の大統領が、北朝鮮に非核化でだまされており、6月の会談も、疑問視する見方が強かった。合意された包括的文書では、トランプが北朝鮮に体制保証を約束する一方、金正恩は朝鮮半島の「完全な非核化」にむけて、断固として取り組むことを確認している。今回はその合意の土台が、早くもぐらつき始めているのである。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日の社説や記事で、米朝首脳会談の本質を暴露して、警告している。同紙は米ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの専門家の分析によると、寧辺核施設のプルトニウム生産炉の冷却システムが改修されているという。別の建物の屋根にある汚れは、遠心分離器を使って兵器級の濃縮ウランが生産されていることをうかがわせるという。さらに咸興(ハムフン)市にある主要ミサイル製造拠点の大幅な拡張工事を完了させつつあることも分かった。新たな衛星写真で製造拠点を検証した専門家らが明らかにしたという。この拠点では日本などアジア圏に展開する米軍に素早く核攻撃をしかけられる固形燃料型の弾道ミサイルが作られている。また米本土も射程圏内に入る長距離ミサイルの弾頭向けに、再突入体も製造されているという。北朝鮮はミサイル発射や核実験を中止したが、大量破壊兵器を造る能力は維持しており、核開発プログラムを継続させていることが明白となったのだ。
こうした状況について当初「北朝鮮の脅威はもうない」と断言したトランプは、この発言を修正しはじめた。トランプは議会に送った文書で「朝鮮半島での兵器に使用可能な核分裂物質の拡散の現実とリスク、および北朝鮮政府の行動と方針は、米国の安全保障、外交、経済に引き続き異常で並外れた脅威をもたらしている」として、元大統領ジョージ・W・ブッシュが始めた経済制裁を延長すると宣言したのだ。これはトランプが北朝鮮の非核化の詳細は未定であり今後の交渉で決めなければならないという判断に戻ったことを意味する。国務長官ポンペオの極東への派遣もその一環であろう。米大統領報道官サンダースの発表に寄れば、ポンペオは5日に北朝鮮訪問に出発する。平壌到着は6日の予定。ポンペオの訪朝は6月12日の米朝首脳会談後初めてで、通算3回目となる。ポンペオは過去2回と同様に金正恩と会談する見通し。首脳会談で合意された「完全な非核化」の具体的手順について詰めの協議をする。ポンペオはその後、7~8日に初来日し金正恩との会談内容を日本政府に報告する。一方、韓国外務省は4日、外相康京和が8日に訪日すると発表した。東京で開かれる日米韓、日韓、米韓の各外相会談に出席する予定だ。
米国はできれば「完全な非核化」へのタイムスケジュールを確認したい方針だが、金正恩がやすやすと応じるかどうかは、予断を許さない。ポンペオも6月下旬に米メディアに工程表の作成は時期早々との判断を示している。こうした情勢を反映して、国務省報道官ナウアートは3日「交渉の予定表を作るつもりはない」と言明、具体的な期限にこだわらない方針だ。一方で、金正恩には常に中国国家主席習近平の影がつきまとっており、最近3回の会談で、金正恩は習近平に“教育的指導”を受けている感じが濃厚だ。中国にとって北の核保有は日米同盟や米韓同盟への牽制となる可能性があるからだ。朝鮮半島をめぐる極東情勢は依然として大国の利害や思惑が交錯する場であり続けるのだ。さっそく朝日新聞などは、政府が国内東西2個所に導入を進めている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のレーダー購入に反対の社説を展開している。その理由として朝鮮半島情勢が緩和の流れに入ったことを挙げているが、これはまさに国防の素人論議だ。国家の防衛は普段から二重三重の体制を確立してこそ、仮想敵の戦意をなくすことが可能なのである。
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