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2018-07-18 00:00
“老人性血気”にはやる小沢と小泉
杉浦 正章
政治評論家
真夏と言えば怪談話だが、最近永田町の柳の影から夜な夜な「政権交代だぞ~」という幽霊が現れるようだ。あの懐かしい仕掛け人二人だ。一人は「変人」と呼ばれる元首相の小泉純一郎。他の一人はいまや「政権交代の権化」ともいえる自由党代表小沢一郎だ。この“小・小コンビ”は、全く波風が立たない政界に、これもとっくに忘れ去られている「原発ゼロ」を合い言葉に政権交代を目指して結託している。首相・安倍晋三の足をなんとしてでも引っ張りたい朝日はこの動きをとらえてはやし立てるが、野党はおろかな低俗民放ですら無視。とても政権揺さぶりの“うねり”など、生ずる気配もない。小沢、小泉の両人とも共通した特性がある。年を取っても若い頃が忘れられず「血が騒ぐ」のだ。政治家の発想の原点などは単純なもので、小泉は安倍が、政治の師でもある自分の在任期間である1981日を5月に抜き、9月の自民党総裁選で3選すれば来年2月に吉田茂、20年8月に佐藤栄作をそれぞれ抜く超長期政権となる流れとなっているのが口惜しくてたまらないかのように見える。小沢は何が何でも政局化の人だ。
その小沢と小泉が“小・小コンビ”でくっついたのだから、政界は面白い。小沢は16日、東京都内で開かれた自らが主宰する政治塾で講演し、「野党が政権の受け皿を形成しなければ、いつまでも安倍政権、一強多弱の状況が続く」と述べた。さらに小沢は15日に政治塾で講師を務めた小泉と、同日夜に会食したことも紹介。小泉が「野党が一つになって『原発ゼロ』で勝負すれば必ず選挙で勝てる」と発言し、小沢は「その通りだ」と応じたという“陰謀”を明らかにした。反安倍の“野合”も勝手だが、安倍にはなかなか隙が見つからない。2012年以降の安倍政権は、戦後日本政治史の中でも珍しい強靱(きょうじん)性」を発揮しており、小沢や小泉も突くに付けないのが実態なのであろう。だから仏壇の奥からはたきをかけて原発ゼロなどと言うキャッチフレーズを持ち出さざるを得ないのだ。しかし、いまやマスコミは原発ゼロなどには新鮮味を感じない。2011年の福島原発の事故は、日本の科学技術力によって「沈静化」されたのであり、小沢や小泉が“血気”にはやっても、朝日以外のマスコミは乗らないのだ。
朝日は16日付けの記事で「小沢氏増す存在感」「3度目の政権交代へ最後の挑戦」となりふり構わぬ“よいしょ”を小沢に送った。「小沢氏が約50年に及ぶ政治家人生でめざした政治主導の一つの帰結が、この政治状況だけに舌鋒(ぜっぽう)は鋭い」だそうだが、この政治状況とは何か。政権が揺らいでほしいのは分かるが、意味不明の浅薄な表現では読者は戸惑う。さらに朝日は「参院選を1年後に控えて意識するのは、第1次安倍内閣の退陣の引き金になった07年参院選だ。民主党を率いて年金記録問題などの政権不祥事を追及し、民主単独で60議席を得た。対する自民は37。衆参の多数派が異なるねじれ状態に持ち込み、政権交代の素地をつくった」だそうだ。この表現の根幹にあるのは来年の参院選への特異な期待であって、公正な選挙情勢や政治状況の分析ではない。
政権を野党やマスコミが突くには経済状況の悪化が一番だが、官房長官・菅義偉がいみじくも「ようやくデフレでない状況まで日本の経済を築き上げることができた」と発言しているとおり、今日本経済は戦後まれに見る活況を呈しているのであり、経済状況につけいる隙はない。小沢や小泉が“老人性血気”にはやっても、自民党内はよほどの偏屈しか付いてゆかないのだ。自民党総裁に誰がふさわしいかという朝日の調査をみれば、国民の空気は一目瞭然だ。安倍が28%でトップ、石破23%、野田7%、岸田5%だ。政界は寸前暗黒が常だが、それにだけこだわっては政局を読むことはできない。
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