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2018-07-27 00:00
中国の統制経済強化は「いつか来た道」
四方 立夫
エコノミスト
中国経済が益々統制色を強めている。中国政府はリーマンショック後の翌年4兆元(約56兆円)の財政出動を行ったが、これがその後の中国経済減速の元凶となった。すなわち、国有企業の負債の増大、過剰投資による過剰設備、民営企業の買収「国進民退」、並びに国有銀行の資産の悪化をももたらし、市場の力を減少させることとなった。市場経済であればかかる企業はリストラ、ないしは倒産により淘汰されるものであるが、中国では逆に大型国有企業の統合が相次いだ。宝山製鉄所と武漢製鉄所、中国遠洋と中国開運、中国電力投資集団と中国核電などがその例である。言わば”too big to fail”を狙ったものであるが、国有企業には特にガバナンスの欠如という致命的な欠陥がある。自由主義世界のM&Aでは「1+1」が2以上になることが必須であるが、合理化を伴ず透明性の欠如した国有企業の合併は経済合理性に反したものとなる公算が大である。
さらに、昨年の党大会において国有企業のみならず、外国企業を含む民間企業を含む全ての企業の定款に「共産党の指導に従う」ことを明記することが義務づけられたことにより、党による経済統制が益々鮮明となった。加えて、「一帯一路」政策により中国国内の余剰生産/在庫を海外において処分すると共に、「独裁体制下での経済発展」と言う「中国モデル」をアジアのみならず広くアフリカ、中南米にまで「輸出」し、中国の影響力拡大を図っている。かかる中国の行動は、かつてソ連邦がアジア~中近東~アフリカ~中南米にその勢力を拡大し、米国との軍拡競争に走り、最終的には統制経済の行き詰まりにより破綻をきたし崩壊に至ったことを思い起こすものである。
中国においても毛沢東による人民公社の導入~大躍進運動の失敗~文化大革命の貫徹により生産力が著しく低下し、数千万人とも言われる死者を出した。その反省から鄧小平は「発展是硬道理」(発展こそ絶対的な理屈である)として「社会主義市場経済」を導入し、その後も胡錦涛に至るまでこれを継承しつつ、部分的な自由化/民主化も導入し、急速な経済発展を成し遂げたものである。しかしながら、習近平を始めとする現在の指導部の大半はかかる辛酸をなめたにも関わらず、言わば「毛沢東による洗脳」から目覚めることなく、「中国の夢:中華民族の偉大な復興」を掲げてナショナリズムを煽り、共産党一党支配体制の堅持を絶対命題とし、習近平独裁に大きく舵を切ったことに強い危惧を覚える。
昨年秋以降、中国は一転して我が国に対し「微笑外交」を再開し、我が国は「一帯一路」に対する「協力」を表明したが、中国国内経済に対する懸念は益々強まっている。中国の「一帯一路」の世界規模での拡大に加え、東シナ海~南シナ海~インド洋への急速な海洋進出の陰に隠れがちな同国の国内経済の実態を正確に把握すべく、昔から中国指導部自身が信憑性に疑念を抱いている公式発表の数字に加え、IMF、世界銀行など第三者の数字と照らし合わせながら真相を究明しつつ、「是々非々」の付き合いをしていくことが肝要である。
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