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2007-06-11 00:00
「普遍的価値を重視する日本」を世界に認識させよ
角田勝彦
団体役員・元大使
最近の「百花斉放」欄には、日本外交のあり方と日本の将来像について、内容への賛否は別として、ともかく熟読玩味すべきいくつかの寄稿が寄せられている。具体的には、「外交理念としての『自由と繁栄の弧』に問題はないか(岡本幸治氏)」「日本ポイ捨ての危機(田久保忠衛氏)」「日米同盟後の武装中立の展望(四条秀雄氏)」「日中の戦略的互恵関係とは?(坂本正弘氏)」(掲載順)である。
周知のように、安倍(・麻生)外交は、「主張する外交」を打ち出し米国と対等の関係の手探り(戦後レジームの決算の一環?)すら行っている。EU(及びNATO)との関連も深めている。戦略としては、「日米同盟の強化」「国連の場をはじめとする国際協調」「中国、韓国、ロシア等近隣諸国との関係強化」という従来の柱に加えて、「普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)を重視しつつ、『自由と繁栄の弧』を形成すること」を新たな柱として打ち出している。さらにこの「自由と繁栄の弧」の豪州への拡大も図っている。
諸寄稿は、これらの動きに触発されたものであろう。さまざまなテーマについて言いっ放しに終わりがちな本欄で、このような方向性が見られることをまず歓迎したい。さて、私は、岡本幸治氏のご意見と異なり、日本の将来は、普遍的価値の重視にこそあると考える(そもそも基本的人権は普遍的概念であり、アジア的人権など存在しない)。また日本が、平和国家(『エコノミスト』誌調査部門EIUが5月末初めて発表した「平和度指数」で日本は世界第5位)であるのみならず、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済などの諸点で、たとえば中国とは全く違う国であることを、世界の人々に認識させることがきわめて重要であると考える。
中国とサムサムの関係を築くべく努力することが重要なのは論じるまでもないが、日米同盟の発展的解体(四条秀雄氏)や日本ポイ捨て(田久保忠衛氏)を招かないためにも、この認識を広めることが重要であろう。安倍総理の拉致問題にかける熱意も、日本の人権重視の一環として理解させるべきであろう。靖国問題も信仰の自由・政教分離という人権の観点から理解させるべきであろう。
現実主義の視点から見ても、超大国として競合相手の出現を常に警戒している米国が、同盟国としての日本を失う危険を侵す(たとえば「瓶の蓋」論を想起せよ)とは考えにくいが、米国民一般が共通の価値観を持つ国として日本を認識することは、米(及び欧州)が、日本と中国を、友邦として見比べるような事態が生まれた場合、重要な判断の基準になるであろう。だからこそ日本と米欧間の離間を望む諸勢力により、日本をおとしめる慰安婦問題の反日キャンペーンが盛んに行われるのである。
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