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2018-09-07 00:00
安倍首相はウラジオストクでプーチン大統領と何を話すのか
飯島 一孝
ジャーナリスト
安倍晋三首相は9月3日、ロシアの極東・ウラジオストクで開催される「東方経済フォーラム」に出席するため、10日から13日まで訪露し、プーチン大統領と会談すると発表した。大統領と北方領土問題の共同経済活動について協議し、平和条約締結を前進させる考えとされるが、大統領は最後の任期途中で、早くもレイムダックの兆しが見えており、とてもそんな余力はない。逆に利用される可能性の方が高い状況だ。安倍首相は自民党総裁選渦中に産経新聞との単独インタビューに応じ、プーチン大統領との会談で「北方領土の帰属問題を協議し、平和条約を締結したい」と述べた。この時期に特定の新聞とだけ、インタビューに応じるというのは世論の反発を受けかねないリスクがある。それを度外視して単独インタビューに応じたのは、何故なのか。
憲法改正問題で読売新聞と単独インタビューした時と同様、政府寄りのメディアしか相手にしないという意思表示なのかもしれない。それだけでも、国家の指導者としての認識のズレを感じざるを得ない。さらに、この時期に訪露しても、プーチン大統領とまともな議論ができないことは明らかだ。ロシアの年金制度改革問題で年金支給年齢の引き上げを提案し、世論の猛反発に遭い、肝心の年齢引き上げ案を一部修正したばかりだ。この問題で高率を保ってきた大統領の支持率も70%台から60%台に低下し、早くもレイムダック状態に落ち込みつつあるとの見方が出ている。その上、米国のトランプ政権が発足してから一層悪化している米露関係が足かせになり、プーチン政権は軍事力強化の方向に動きつつある。その一つの現れが、極東やシベリアで中国と共同で実施中の大規模軍事演習「ボストーク(東方)2018」だ。この軍事演習は旧ソ連時代の1981年以来の規模で、中国軍も3000人以上参加しているという。まさに軍事面の中露連携を内外に示すとともに、日米軍事同盟へのけん制であることは疑いない。
そんな状況の中で、国家の威信がかかった領土問題を首脳同士で協議しても、事態打開に向かうような結論が出るはずはない。まして、ロシアは領土問題に関して「これは第二次世界大戦の結果だ。それを認めようとしない日本はおかしい」との論調を強めている。冷静に考えれば、安倍首相は日本側の領土返還への熱い想いを真剣に受け止めようとしないロシア相手に、無駄なパフォーマンスをしようとしているとしか言いようがない。安倍首相は自民党総裁を2期務めたが、経済はそれほど良くならず、かけ・もり問題では依然として世論の不信を買っており、頼みの綱は外交だけといっても過言ではない。今回の訪露でも、プーチン大統領との会談をなんとかして外交の成果につなげようという、安倍政権の狙いが垣間見える。自民党員はこうした現状をきちんと把握し、総裁選び、つまりは首相選びをしないと、そのツケは必ず国民に返ってくることを肝に銘じるべきだ。
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