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2018-09-20 00:00
(連載1)欧州で日本の人口減少を考える
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
イギリスのブレグジット交渉が大きなヤマを迎えているという報道が連日続いている。EC加盟以降40年にわたって積み重なったEUの仕組みを取り外す作業は、並大抵のことではない。これまでのイギリスの様子を見ると、EUの負の側面が広まっているように見えるかもしれない。しかし実際には、経済を見れば、EU加盟諸国は堅調な経済成長を果たしている。イギリスもまた例外ではない。
ここ数年、ヨーロッパにしばらく滞在すると、実感することがある。それは、ヨーロッパは豊かになっている、ということだ。特に昨年から政治分析部門の客員専門家の肩書で出入りしたICC(国際刑事裁判所)があるオランダ経済は、すこぶる好調だ。私は、かつてイギリスで博士課程に在籍していたほか、論文提出後の非常勤講師や学術雑誌編集長の仕事をしていた時期も含めると、1990年代に約5年間、ヨーロッパで過ごした経歴がある。その頃は、バブル崩壊直後とはいえ、日本の経済状態も今とはだいぶ違っていたので、日本の相対的な豊かさと比較して、ヨーロッパを見ることが多かった。周囲の人々も、そのような感覚を持っている人が多かった。その頃の記憶があるからだろうか、隔世の感がある。富裕層の数だけでなく、平均的な人々の生活水準が、明らかに向上しているように見える。
1993年当時、日本の一人当たりGDP(名目)は3万5千ドルの水準にあった。他方、当時のオランダの一人当たりGDPは2万2千ドル程度にしかすぎなかった(もっとも購買力平価一人当たりGDPは日本も2万2千ドル程度だったのだが)。それが今ではオランダの一人当たりGDPは5万5千ドルの水準になっており、4万ドル前後の日本を大きく引き離している。日本は依然として世界第3位の経済大国ではあるが、一人当たりGDPでは、30位程度の水準にいるに過ぎない。
ほんの四半世紀前までは世界のトップを争っていたのだから、その停滞ぶりには目を覆いたくなるものがある。日本を抜き去ったのは、実は復活を果たしたアメリカや主要なヨーロッパ諸国などである。一人当たりGDPが世界30位でありながら、GDP総額では世界3位の地位を保っているのは、日本の人口規模がまだ世界10位レベルにあるからだ。GDP世界3位と言っても、今や日本と米国・中国との差は数倍単位の圧倒的なもので、人口が3分の2以下のヨーロッパ諸国との差のほうが小さいのが現状である。(つづく)
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