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2018-09-21 00:00
(連載2)欧州で日本の人口減少を考える
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
なぜこうなったのか。ヨーロッパで実感するのは、やはり「規模の経済」ということだ。欧州単一市場の成立によって、ヨーロッパ人は、5億人以上の規模の共通市場を獲得した。「規模の経済」が、各国の特性を活かし、弱点を補い、全体的な底上げを図ったことは確かだろう。日本は1980年代後半に1億2千万人規模の人口を擁するに至ったが、当時の世界人口はようやく50億人になるところだった。しかし世界人口は、2011年に70億人を突破し、さらに現在も増え続けている。その反面、日本は減少し始めている。日本の国内市場の基盤が、相対的に低下しているのは、不可避的な現象である。
あたかも日本が一人当たりGDP世界一の四半世紀前の水準にあるかのように言いながら、人口減少時代について語る人がいる。もちろん幻想である。「対米従属からの脱却」といったイデオロギー言説をつぶやき、あらためて核武装やら自主防衛体制の整備などを夢想したりするのは、合理性を欠いている。
同時に、憲法9条は世界最先端で、世界各国は日本を模倣すべきだ、といった言説も、「日本は世界有数の先進国だ」、という団塊の世代に典型的に見られる思い込みに依拠したものではなかったか。世界の人々は、画期的な経済成長を果たした日本に魅了され、絶対平和主義としての憲法9条を模倣するだろう、という思い込みは、やはり失われた過去にしがみついた幻想でしかない。
絶対平和主義として憲法学者によって解釈された憲法9条は、冷戦体制の産物でしかなかった。冷静終焉とともに、そのような幻想とあわせて、経済成長も、同時に止まった。このことは偶然ではなく、現実だ。日本もそろそろ現実を直視したうえで、仕切り直しの国家像を構想する時期に来ているのではないか。(おわり)
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