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2018-10-03 00:00
改憲へ大きくシフト:第4次改造内閣
杉浦 正章
政治評論家
第4次安倍改造内閣で明らかに改憲シフトは達成され、来年の参院選への体制作りも完了した。首相・安倍晋三としては自民党の改憲案を直近の臨時国会に提出して、自民党結党以来の宿願達成に動き出す。佐藤内閣の安保改正に匹敵する政治課題を安倍政権は抱えることになり、戦後まれに見る与野党対決ムードは一段と高まりをみせるだろう。しかし、安倍は明らかに中央突破路線を推し進める方向であり、改憲は曲折をたどりながらも実現へと動くだろう。まず最初の突破口が党役員・閣僚人事で開かれた。一番顕著なのは総務会長に竹下派ながら安倍に近い加藤勝信を据え、党内の改憲シフトを印象づけた。一方内閣には法相に石破派の山下貴司を当選三回生にもかかわらず抜擢した。改憲を進めるに当たり答弁能力や知識を買ったが、「一本釣り」の印象は否めまい。党内野党色を強める石破への牽制球という側面もある。加えて憲法改正の「旗振り役」となる自民党憲法改正推進本部長に元文部科学相下村博文を起用した。これら改憲シフトは安倍の本気度を示すものであり、ルビコン川を渡ってローマへ進軍するシーザーではないが「サイは投げられた」のである。いち早く3選支持を表明して流れを作った幹事長・二階俊博は留任。安倍政権へのあからさまな批判を繰り返した筆頭副幹事長小泉進次郎は交代の可能性が強いようだ。その反面政調会長・岸田文雄を続投させたのは、ポスト安倍の候補として認定した側面がある。女性登用は片山さつき1人にとどまったが、原因は女性の人材難だろう。
憲法改正のために必要な手続きは、衆議院で100人以上、あるいは参議院で50人以上の賛成により、改正原案を発議できる。衆議院で発議された場合には、本会議で総議員数の三分の二以上の賛成を得ると参議院に送られる。参院本会議で総議員数の三分の二以上の賛成を獲得できた時点で、国会として憲法改正案を発議したことになる。その後に、国民投票による承認が求められる。国民投票で過半数の賛成が得られると憲法改正が実現する。安倍は「自民党としての憲法改正案を次の国会に提出できるよう、 とりまとめを加速する。憲法改正には、衆参両院で3分の2を得て発議し、国民投票で過半数の賛成を得るという極めて高いハードルを乗り越える必要がある。」 と強調した。また安倍は改憲への取り組みを「全員野球内閣でやる」と延べるとともに、「幅広い合意を目指す」として、改憲勢力を糾合して実現を目指す考えを明らかにした。
自民党が目指す改憲案は(1)9条を維持した上で自衛隊の根拠規定を加える、(2)大規模災害条項を加える、(3)教育の無償化をうたう、(4)参院選合区の解消などだ。与野党は9条改定で激しく対立する可能性があるが、その他の条項では必ずしも反対ではない内容もあり、対応はまちまちだ。自民党内も石破茂が慎重論だ。「国民の理解なき9条改正をスケジュールありきでやるべきではない」と強調している。9条への「自衛隊明記」案を前面に改憲を急ぐ首相に対し、石破は「あわててやる必要はない」と対立を鮮明にしている。若手の入閣で派を切り崩されたという不満が残った。与党内も現行の改正案では公明党が難色を示しており、なお調整が必要なようだ。事を性急に進めず、国民に対する説明を丁寧に行いつつ、進める必要があろう。
一方野党も内閣改造について、共産党書記局長小池晃が「閉店セール内閣」と批判、日本維新の会の片山虎之助共同代表も「自民党総裁選の論功行賞や滞貨一掃の感じが拭えない」とこき下ろした。これらの批判は、言葉が躍るばかりで説得力に欠ける批判だ。「閉店」までにはまだ3年もあるうえに「滞貨」の人材はまだ山ほど居て、「一掃」にはほど遠い。もっとも安倍が性急に事を運べば、国論を二分させ、息も絶え絶えの立憲民主党や国民民主党が国政選挙で揺り戻す可能性も否定出来ない。加えて長期政権の与党はとかく弛みや驕りが目立つ側面があるが、引き締めを図る必要があろう。
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