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2018-10-12 00:00
進化する日米同盟
四方 立夫
エコノミスト
“More Important than Ever”と題する”Nye-Armitage Report 2018”が発表された。今回特に印象に残ったことの一つは、日米のビジネスセクターの協力の重要性が随所に織り込まれたことである。例えば以下の文章がプライベートセクターの役割を強調している。“The two governments should establish a ‘business-government dialogue’ bringing together American and Japanese CEOs with senior government officials from both capitals to set a practical agenda to address remaining structural issues.”
1) ”Recommit to an Open Trade and Investment Regime” “The US government, and the US private sector, should work more closely with Japanese agencies and companies to expand cooperation in this area.” 7) “Expand High-Technology Cooperation”
米国のそして日本を含む殆ど全ての資本主義国の最大の問題は、富の分配の著しい不公平に対する一般大衆の激しい怒りであり、それがトランプ大統領を生んだ背景となっている。民主/共和両党共にかかる問題を十分に認識し、選挙戦では“Wall Street”を強く非難しても、両党の政治家の多くが“Wall Street”を始めとする”Billionaire”の支援を受けていることから実際には手を付けられないのが実情である。もはや政治家だけに頼るわけにはいかない。このままでは資本主義は瓦解する。資本主義の主導者である民間企業が主体となり、政官と協力しながら産業の構造改革、新技術開発、新規投資などによってラストベルトを始めとする地域の活性化を図り、雇用を増やし、賃金を上げることが喫緊の課題である。
経団連の中西会長は2018年5月の就任演説の中で「これまでとは次元の異なる民間経済外交の展開を通じて、国際社会での発信力、発言力を高めていきたいと思います」と述べているが、我が国企業が米国企業と協力し、貿易赤字の削減に留まらず、両国の抱える根本的な問題に対し中長期的戦略を構築し実行していくことが肝要である。最近発表されたホンダとGMの提携などはその例になるかもしれない。また、このような「民間経済外交」が、本来TPPの最大の受益者である米国経済界がトランプ政権に対し、理屈の「理」ではなく利益の「利」をもってTPP復帰をより一層強く働きかける原動力となる。これこそが”Nye-Armitage Report ”の言うところの安保条約第二条の「両国の間の経済的協力を促進する」ことに他ならない。
さらに、本レポートは中国に対する強い警戒感を露わにしている。現在の米中貿易戦争は単なる貿易赤字の削減ではなく、中国が「中国製造2025」に則り推進しているITを始めとする先端技術を巡る技術覇権戦争でもある。2018年9月の日米共同声明において「知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公正な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極の協力を通じて緊密に作業していく」とある通り、自由主義世界が一丸となり、政官民が一体となって中国に対峙すると共に、WTO改革を推進し、自由で公正なルールを構築していくことも合わせ喫緊の課題である。中国は既に5Gにおいて世界の先端を行き、AIにおいてもトップクラスにある、と言われているが、この分野においても日米民間企業の協力が欠かせない。日産とGoogleとの提携はその良い例となるかもしれない。現代は”Geopolitics”のみならず “Geoeconomics”の時代でもある。日米同盟も従来の安全保障に加え、広く経済~技術~情報などをカバーする包括的パートナーシップへと進化していくことが強く求められている。
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