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2018-11-12 00:00
日本の海洋安保プレゼンスに評価
鍋嶋 敬三
評論家
海上自衛隊が2018年8月下旬から2ヶ月間にわたってインド太平洋方面に派遣した部隊とアジア諸国や米英との共同訓練が日本の地域での存在感を高めた。派遣地域は南シナ海からマラッカ海峡を経てベンガル湾からインド洋へつながる広大な海域だ。米第7艦隊(横須賀)の守備範囲と重なる。ロンドンに本拠を置く国際戦略研究所(IISS)のアジア戦略専門家W.チューン氏は、地域の「不確実性と不安定化の中で日本は秩序の強化に誠実に励んで」おり「地域安定のための勢力である」と、こちらが面はゆいほどの高い評価をした。海自は最新鋭のヘリ空母型の最大級護衛艦「かが」(基準排水量19,500トン)に護衛艦「いなづま」と「すずつき」を随伴させ、800人の海上自衛官を送り出した。「かが」に乗艦した同氏は真珠湾攻撃に出撃した旧海軍の空母「加賀」と異なり、現代の「かが」は「地域の平和と安定に積極的に貢献する日本の努力の好例」と描写している。
海自部隊はインド、インドネシア、シンガポール、スリランカ、フィリピン5カ国を訪問、南シナ海でベトナム軍と対潜訓練、スマトラ島西方沖のインド洋で英軍と戦術運動、インド洋北部のベンガル湾でインド軍と共同訓練の帰路、ベトナム南方の南シナ海で米海軍の補給艦から「かが」と「いなづま」が同時に洋上補給を受けた。この時は、9月末に米イージス駆逐艦に異常接近事件を起こした中国のミサイル駆逐艦が追尾を続け、中国の関心の強さを見せた。習近平政権下で人工島の建設、軍事基地化で南シナ海の緊張が高まり、貿易摩擦の激化とともに米中間の対決機運が強まった。ペンス米副大統領が10月、ワシントンでの対中政策演説で「中国に対する新たな取り組みの導入」に基づいて「強力で素早い措置」を取ってきたことを明らかにしている。
トランプ政権は最近、南シナ海における「航行の自由作戦(FONOP)」の頻度を上げている。米中軍艦の異常接近もこのような情勢の下で発生した。FONOPについてチューン氏は「行きすぎた海洋上の主張に対する法的、技術的な異議申し立てで、外交的に中国に圧力をかけるもの」と定義している。FONOPを続けなければ、やがて自由な航行という国際法上の権利を失い「米軍が南シナ海から手を引けば、地域での米国の信頼は失われる」ところにその戦略的意義があるとしている。11月9日にワシントンで開かれた米中外交・安保対話でも、特にFONOPを巡る激しい対立は解けなかった。ちょうど1ヶ月前の北京での外相会談での激しい応酬の際、ポンペイオ国務長官は「米中間に根本的な不一致がある」と語ったものがそのまま持ち込まれたのだ。
日本はFONOPには参加していないが、理念は共有している。日米安保同盟を補うように准同盟国、友好国との連携強化を急いでいる。米、英、仏の他に外務・防衛閣僚協議(2+2)の拡大が急ピッチだ。オーストラリアとの2+2(10月)では初の戦闘機訓練を2019年に実施する。「物品役務相互提供協定(ACSA)」も米国に次いで発効させた。日本とインドは10月30日の首脳会談で2+2の立ち上げとACSAの交渉開始で合意。日米豪印4カ国による安全保障の協力関係の環がつながる。自衛隊と各国との共同訓練も活発になってきた。英国とは陸海空とも実施、フランスやカナダの海軍とも行っており、日米同盟を補完して地域の安保強化に役立っている。トランプ政権の同盟国に対する「負担増」要求に応える意味もある。安倍晋三政権が呼び掛けてきた「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進するための関係国との連携は地域の安定に役立ち、日本の外交発言力の強化につながることは疑いない。
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