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2018-11-19 00:00
(連載1)米国の中間選挙を終えて
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
2018年11月6日、アメリカで中間選挙(Midterm Elections)の投開票が行われました。連邦下院全議席(435)、連邦上院の約3分の1(33+2[特別選挙])、半数以上の州知事選挙が行われました。結果は、連邦上院では共和党が52議席を獲得し、過半数から更に1議席を積み増し、ということになります。非改選は共和42、民主23ですから、もともと共和党に圧倒的に有利な状況ですが、それでも過半数を抑えたという事実は大きいことです。連邦下院は民主党が大勝利、地滑り的とまでは言えないにしても、完勝ということが言えます。まだ全議席が確定していないのですが、民主党が共和党の議席を30議席程度ひっくり返した結果で、過半数の218を10程度超える229議席を獲得する見通しになっています。州知事選挙では、民主党が逆転した州が7、共和党が逆転した州が1で、それまで共和党が圧倒していたのが民主と共和が拮抗に近い状態となりました。
2008年以降の選挙では、民主党がオバマ大統領の当選、連邦上下両院で大きく過半数を超える地滑り的大勝利となりました。オバマ政権下ではその後、連邦議会では共和党が勢力を回復し、2010年以降、連邦下院では過半数を大きく上回り、2014年以降は連邦上院でも過半数を獲得する状況となりました。2016年の選挙では、トランプ大統領勝利、連邦上下両院で過半数を維持という結果になりました。今回、連邦下院で民主党が過半数を獲得し、これからは、大統領は共和党、連邦上院過半数は共和党、連邦下院過半数は民主党ということになります。連邦上院は土地を代表する選挙システム(州の規模に関係なく各州2名ずつ)ということになります。この場合、共和党の優勢な、人口の少ない州が有利となります。
日本で言うと、一票の格差がどれだけあるんだという話になりますが、州を代表するということで、アメリカ連邦を構成するカリフォルニア州もノースダコタ州も平等ということになります。共和党が優勢な州は「赤い州(レッドステイト)」、民主党が優勢な州は「青い州(ブルーステイト)」と呼ばれていますが、レッドステイトが20以上あるということは、連邦上院で40議席以上は固いということになり、共和党に有利な状況がこれからも続いていくことでしょう。連邦下院は人間の数を代表する選挙システム(人口に基づいて区割り)です。ゲリマンダーという言葉を覚えている人も多いと思いますが、この区割りは各州の裁量に任されており、その州で優勢な政党に有利なように区割りされるという場合もあります。連邦下院は2年ごとに全議席が選挙されるので、連邦下院議員は大変です。2年ごとに選挙があるので、政治に野心がある人が予備選挙から挑戦してきますし、本選挙となれば相手の党と戦わねばなりません。連続して当選するということは大変なことです。
ドナルド・トランプ大統領にとっては今回の選挙は、敗北でありましたが、実質的には勝利ということになります。まず、共和党は連邦上院で民主党の議席を4議席(フロリダ、インディアナ、ミズーリ、ノースダコタ)ひっくり返しました。民主党がひっくり返したのは1議席(ネヴァダ)です。これで過半数以上、52議席が確定しました。共和党が議席をひっくり返した4州は2016年の大統領選挙でトランプ大統領が勝利した州であり、共和党が優勢州と激戦州とされる集です。民主党が議席をひっくり返したネヴァダ州は民主党が優勢で、2016年の大統領選挙では民主党のヒラリー・クリントンが勝利しています。党派性が色濃く出た結果と言えるでしょう。トランプ大統領が様々なスキャンダル、疑惑に晒されているのは日本でも報道されています。ロシア疑惑、脱税疑惑、不倫疑惑などですが、大統領を訴追する権限は連邦下院に与えられています。一方、訴追された案件を裁判する権限は連邦上院に与えられています。正確には大統領だけではなく、連邦判事や閣僚、連邦議員たちを含む公務員もこの権限の対象となります。(つづく)
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