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2018-12-03 00:00
外国人労働者問題
山崎 正晴
危機管理コンサルタント
2018年11月27日、外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が衆院本会議で与党や維新などの賛成多数で可決された。政府は特定14業種に初年度4万人、2025年までに50万人超の受け入れを想定している。少子化による深刻な人手不足への対応策として、「外国人労働者の受け入れ拡大」には一見妥当性があるように思えるが、よく考えてみると、もろ手を挙げて賛成するわけにはいかないことが分かる。その理由を以下に挙げる。
移民受け入れ先進国の米国と欧州では「移民排斥」の空気が充満している。トランプ米大統領がリビア、イラン、イエメン、シリアからの移民の入国を禁止したり、メキシコとの国境に壁をつくったりした直接の理由はテロと犯罪の防止だが、その背景には非白人人口増加への恐怖がある。1969年に人口の15%だった非白人が、2050年には白人の数を上回ると予想されている。それに加えて、移民人口の増大がある。特に中南米系は2011年の段階で人口の17%と既に黒人(12%)を上回っており、2050年には人口の30%に達する見通しだ。欧州での移民排斥の背景はより深刻だ。2015年10月、130万人を超えるシリア難民が欧州に殺到、そのうちの100万人を受け入れたドイツでは住民との間のあつれきが高まり、2016年には国内各地で3500件もの難民襲撃事件が発生した。これまで難民受け入れを推進してきたメルケル首相は2018年10月の地方選挙で敗北、キリスト教民主同盟(CDU)の党首辞任を表明した。英国では、ポーランドやルーマニアなどEU(欧州連合)圏内からの移民が2004年の100万人から2015年に300万人、2016年には589万人に達した。雇用や公共住宅確保などで移民と競合する労働者や低所得者層を中心に国内で反EU感情が高まり、2016年6月のEU離脱決定につながった。人口の15%に相当する140万人の移民を抱えるスウェーデンでは、近年急速に治安が悪化しており、住人の中には安全を求めて国外に脱出する者も出てきている。同国の犯罪防止国民会議の調査によれば、2014年には、若い女性の14%がレイプなど性犯罪の被害に遭い、2016年には全国民の15.6%が強盗など暴力犯罪の被害に遭っている。最近BBCが放映したドキュメンタリーによれば、国内に23カ所ある移民居住区域は事実上無法地帯となっており、重武装した警察官以外立ち寄る地元民はいないという。もう一つの問題は「急速に進む産業の自動化」だ。米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは最近のリポートの中で、人工知能(AI)やロボットなどの急速な普及により2030年までに全世界で最大8億人の雇用が失われ、日本では今後10年以内に単純労働者の50%が不要になると予測している。
このようなタイミングでわざわざ外国から大量の単純労働者を受け入れることは正しいのか。日本にとって本当に必要なのは単純労働者ではなく、AI技術者など高度人材なのではないか。10年後に不要となった大量の外国人の面倒を誰が見るのか。日本が外国人労働者を必要とする背景には、深刻な「少子化」がある。日本の生産年齢人口(15歳から64歳まで)は、2015年の7681万人から2060年には4418万人まで減ると予想されている。この減少分をそのまま外国人労働者で補填しようとすると3263万人の移民が必要になる。さらに悪いことに、この間に高齢者人口が2%増える見通しだ。これも加味すれば、2015年と同じだけの生産を維持するには3419万人の移民が必要という計算となり、それは、その時点での日本の人口の40%に相当する。これを見ると、現在の外国人労働者受け入れ策が、少子化対策としては「焼け石に水」でしかないことが分かる。かといって、人口の40%もの移民を受け入れたら日本社会は間違いなく崩壊する。
では、どうしたらよいのか。答えは「生産性の向上」にある。国際比較で見ると、日本の生産性は決してい高い方ではない。2015年の先進国の労働者1人当たり生産性ランキングで日本は18カ国中17位(8万7006ドル)で、1位のノルウェー(13万7321ドル)の63%、2位の米国(12万8450ドル)の67%でしかない。しかし、このことは日本の生産性に、少なくともまだ4割もの「伸びしろ」があることを意味している。人手の不足分を外国人労働者で補うのでは生産性の向上にはならない。足りない人手を社員のスキルアップ、工程の自動化、経営の合理化などで補い、生産性を飛躍的に高めることこそが、今日本が真に必要としていることではないか。外国人労働者の割り当てを求める企業には、国が費用を一部負担し、専門家による技術指導を受けさせ、具体的な生産性向上計画を策定した場合に限り、最小限の外国人労働者の雇用を認めるべきだろう。現在の、日本企業の教育研修投資額は先進7ヶ国中最下位であることを付記しておきたい。
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