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2007-06-27 00:00
核廃棄、北朝鮮の土俵に乗るな
鍋嶋敬三
評論家
北朝鮮の核開発をめぐる6カ国協議がようやく動き出す。米国首席代表のヒル国務次官補が北朝鮮を訪問し、2月合意で60日以内とされた「初期段階の措置」の実施について一定の合意に達したためだ。北朝鮮外務省報道官は6カ国の首席代表協議を7月上旬に、外相会議を8月上旬に開くよう米朝両国が協力することを明らかにした。北朝鮮が米国との直接交渉を通じて6カ国協議の主導権を握ろうとする表れだろう。
北朝鮮が得たものは大きい。第一に6カ国協議とは無関係の金融制裁を逆手に取って米国を揺さぶり、北朝鮮資金の凍結を解除させた。第二に1月のベルリンに続く米国との直接交渉で成果を上げたこと、第三に「60日以内」という期限を大幅に引き延ばして時間を稼ぎ、この間も核施設の稼働を続けたことである。これに対して5カ国が得たものは何もない。米ブッシュ政権は米国との直接交渉に持ち込むという北朝鮮の戦略に引き込まれた形だ。6カ国協議という北東アジアの安全保障をめぐる多国間システムが有名無実化される恐れがある。核放棄をさせるという本来の目標に向かう時、北朝鮮の土俵に乗せられてはならない。
「初期段階の措置」では再処理施設を含む核施設の稼働停止・封印、国際原子力機関(IAEA)による監視・検証が決められている。IAEAの要員が6月26日北朝鮮入りしたが、北朝鮮が約束通りに実施するかどうかが、まず問題だ。「次の段階」では北朝鮮はすべての核計画の申告、すべての核施設の「無能力化」を約束、これが実施されれば初期段階と合わせて重油100万トン相当のエネルギー支援を受ける。問題は北朝鮮が否定する高濃縮ウランの開発計画を申告するのか、既に保有している核兵器8~10個分に相当するプルトニウムの扱いはどうなるか--である。これら肝心の点は2月合意で棚上げされたままだ。北朝鮮が表に出ていない核計画をすべてさらけ出すとは考えられない。「核」は金正日政権の「体制保証」の唯一のカードだからである。
米朝関係では、初期段階で米国がテロ支援国家指定の解除、対敵通商法適用の終了のための作業を開始することをうたっている。北朝鮮にとっては対米関係正常化のための第一関門であり、早期実施を米国に迫るだろう。日本としては、拉致問題が進展を見ないまま米国がテロ支援国家の指定を解除しないよう、米国への働き掛けを強めなければならない。柔軟路線に転じたブッシュ政権があと一年半の任期中に解決したいとの思惑が絡んで功を焦り、北朝鮮に付け込まれるすきを作ってはなるまい。
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