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2018-12-26 00:00
(連載2)新日鉄判決からみた反日韓国と日本の対応
松川 るい
参議院議員(自由民主党)
慰安婦問題については、韓国に発信しても余り意味がない(徒労)と思ってきましたが、今回の旧半島労働者問題については、韓国国民に対しても日本から発信をすべきだと思います。特に、単に「個人の請求権は消滅済み」という結論をいうだけではなく、(1)もともと日本側から個人補償を提案したこともあったのに韓国政府が一括して自分に資金をくれといったのであり、韓国政府が資金分配の責任を負っている、(2)当時日本政府が支払った8億ドル(うち3億は民間借款)は、韓国の当時の国家予算の2.3倍、(3)廬武鉉大統領自身がさんざん調査した挙句、2005年に徴用工は日韓請求権協定の対象として処理済という結論を出しており、その前提に基づき、数字の救済策を旧半島労働者に対し取っているといったこと、などを発信するべきです。本当は、韓国政府や韓国のマスコミがやるべき仕事ですが。韓国政府もマスコミも、日本となると正確に報道しません。日韓請求権競艇のディール内容や、日本が日韓請求協定により渡した資金がいかに韓国の発展に貢献してきたか、また、日本企業が贖罪意識もあっていかに多くの技術支援をしてきたか、一般の韓国国民は知らないのではないでしょうか。韓国は、国民世論が最高法規です。したがって、韓国国民がそれほど本件問題について強硬な世論に傾かないのであれば、韓国政府としても(政府自身のやる気があればの話で確信犯の場合は無駄ですが)、動ける予知が増えるでしょう。そのため、韓国世論が冷静な判断ができるようにすることは、本件問題の解決にとても重要だと思います。
慰安婦に関する日韓合意を実質的に破棄するような財団解体、旭日旗、旧朝鮮半島出身労働者判決、どうして、北朝鮮の問題で日米韓の協力が一層必要になっている中、しかも、日韓関係は比較的改善に向かっていたと思われた中、突然、こうした反日としか思えない行為を韓国はone after another次から次へと起こすのでしょうか。北朝鮮のみならず中国の強大化や米国の同盟国に対する要求の変化など、日韓関係は戦略的利益を共有しうる関係にあるはずなのですが、実際には、韓国は100年前からの歴史問題を持ち出して日韓関係を悪くしています。一体なぜなのか、理解できないという方は多いと思います。これについては、やはり、韓国は日本に対しては、深いトラウマを抱えているように思います。韓国の歴史戦というのは、国際政治学の問題というより精神分析学上の問題のように感じます。要するに、お互い同じ土俵で戦った相手なら、つまり、対等な関係なら、許せるのです(おそらくたとえ自分が負けても)。たとえば、ベトナム戦争を戦ったベトナムは米国と和解しています。対等に戦ってしかも勝ったからです。ドイツとフランスは歴史上何度も戦い、お互い勝ったり負けたりしていますが、和解しています。ナポレオンにドイツ側がやられたこともあれば、ヒトラーにパリ凱旋されたこともあるけど、同じ土俵にのって戦ったからです。しかし、韓国(というか戦前なので大韓帝国とその前身の李氏朝鮮)とはそうではありません。韓国は、日韓併合の結果、日本の一部として日本と共に、米国や中国に対して戦ったのであって、日本と戦ったことはない、同じ土俵にたったことさえないわけです。これが、韓国は自分の歴史として心理的に受け入れ難いのでしょう(事実であっても)。
だから、今、韓国は、今のムンジェイン政権に始まったことではありませんが、歴史を修正というより書き換えようとしています。「日本と戦って勝った」風に。だから、1919年3月1日を韓国の建国日にしようとしていますし(韓国成立は、北朝鮮と分離独立を宣言した1948年というのが事実です)、パククネ政権は、中国にいって、「上海臨時政府」が雄々しく日本と戦った(日本とまともに戦ったことはないとしてサンフランシスコ平和条約当事国と認められなかった事実があります)、とか、ハルピン駅前で伊藤博文を銃で暗殺した安重根を民族の英雄としてプレイアップしたりしているわけです。また嫌な案件(慰安婦や旧半島出身労働者など)についてはすべからく「韓国人が自主的にやったわけではなく、あくまでも、日本に無理やり「強制」されたのである」と強制性を強調します。そして、だからこそ、韓国が唯一日本から武力で取り返した竹島は、韓国にとっては歴史問題であってただの領土問題ではないのです(日本は占領下で軍事力がなかった時期ですから韓国が誇りにすべきことなのか疑問ですが)。歴史を書きかえるなんて!と日本人ならドン引きですが、韓国の歴史観は、ヘロドトスの歴史(ペロポネソス戦争でのペルシャ敗因を分析)ではなく、正史(権力者からみてこうあるべきという歴史物語)を残すのが歴史であるとした司馬遷の歴史観そのままです。中国やロシアや日本といった強国に囲まれた朝鮮半島の歴史は辛いものがあるでしょうし、直面したくないだろうなと思います。しかし、今や韓国は一人当たりGDPは日本と変わらぬ豊かさであり、K-POPから韓流ドラマまで世界での韓国の存在感も上がりました。韓国は立派な国に成長したのです。こうして自信も深めたら、きっと日本のことは気にならなくなり反日も減るだろうと思ってきた日本関係者の見通しは外れたわけです。
さらに、ムンジェイン政権では、歴史修正に加え、南北「統一」(経済共同体)の夢というさらなるファクターがあります。今回の一連の反日行為が次々と出てきているのは「存軽」だと思うのですけど、南北経済共同体実現がムンジェイン大統領の一番の夢であって、日本含め他のことに殆ど関心がないということもありましょう。さらに言えば、歴史で共闘することができれば南北が融和し統合できるという目論見もあるのかもしれません。韓国は日本と決別して北朝鮮と南北「統一」という儚い夢に邁進するつもりなのか。そういう確信犯理論もあり得なくもないですが、韓国がどっちの方向にしてもあんまりその行動の負の影響については考えていない。考えているのは歴史修正とか南北ファーストとか自分がやりたい内向きなことだけで、殆ど外交戦略的発想で考えているようには思えません。ムンジェイン大統領は、決して、現代の日本に対して反日であるとか特段の感情があるわけではないと思いますが、韓国的に望ましい(こうあれかし)の歴史修正と南北ファーストが反日的行為がぽろぽろ気軽に出てくる背景にあると思います。韓国が反日を「存軽」する理由は歴史修正ですが、「存軽」できる理由は、日本がプラスにもマイナスにも大して重要ではないからです。米国、中国は、怖いし経済的にも安保的にも利害が大きいが、日本はそこまでではない上、大して怖くない。だから、別に関係が悪くなっても歩留まりがあるわけで、あんまり困らない、と思っているのでしょう。中国の強大化をはじめとする国際情勢の変化の中で、韓国にとっての日本の重要度が下がったわけで、経済的利益という意味では中国と米国、安全保障面では米国ということでしょう。中国については、怖い。何かやった場合は5倍返しでしっぺ返しされることは韓国は十分わかっています。また、何か反日的行動をとっても「遺憾である」と言われるぐらいで、大して困らない、中国とは違うわけです。さらにいえば、日本との関係でこんな風にしたいとかこういうことをやりたいから日本と組みたいとか、そういうビジョンもありません。だからなのです。
他方、これは、別に韓国に限らず、日本もそうだと思うのです。米国、中国との関係は極めて重要だが、韓国との関係は別に日本にとって死活的ではありません。海洋国家化した現在、7世紀の日本にとっての朝鮮半島の重み(中国大陸にいく通路)と今の日本にとっての重みも自然違ってきているわけです。日本も韓国について、どうしたいとかビジョンがあるわけでもない。良好で安定した関係がいいとはもちろん思っている。でも、それ以上に何かのビジョンや計画を実現する上での不可欠のパートナーといった観点はないように思います。鶏が先か卵が先かわからないところはありますが。日本はどうしたらいいのか。本当に。一つには、今回の判決は今までの反日行為とは桁違いのインパクトがあり、韓国政府がハンドリングを間違えば日韓関係が壊滅的打撃をうけるということを韓国にわからせなければなりませんし、そのためには韓国も痛みを感じるという状況にしなければなりません。ICJといわず、他分野でもなんでも。韓国に何等かの国内的措置を考えさせることです。同時に、日本企業の資産がある第三国、特に国際世論を作る米国欧州(彼らも宗主国)には徹底して本件の不当性と日本の正当性をインプットしていかねばなりません。一度、徹底的に崖っぷちに立たなければ、韓国は日本との関係について真剣に考えないのかもしれません。出されてしまった判決は破壊的なものであり、しかも、あと14件もかかっている訴訟についてもどうせ同じような判決が相次ぐのでしょうから、ますます、日韓関係は危機に陥っていくと思います。本当に日本を失っていいのか、韓国にちゃんと考えてもらいたい。今回は、本当に日韓の試練です。日本としては、しばらく韓国についてはあきらめるしかないのかもしれません。一つは、日韓関係を改善するためにも、日中関係や日米関係を良好にすることです。米中関係厳しき折、中国が今回韓国の肩を持たないだけでも日本に対する「貸し」になるでしょうから、中国にとっても悪い話ではありません。大体、過去の歴史を振り返っても、日本と朝鮮半島は難しい時期が大半でした。中国と仲が良いときは日本に冷たくあたり、中国と関係が悪いときは日本にすり寄ってくるというのが基本パターンです。なので一喜一憂しても仕方ないところはあります。韓国が未来志向の関係というのであれば、過去の日本統治時代の被害について南北間で語り合うのではなく、将来の北東アジアをどう作っていくかについてのビジョンを日韓で語るようになるべきなのですけれど。とても残念です。(おわり)
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