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2019-01-16 00:00
北方領土をめぐる日露交渉の行方
飯島 一孝
ジャーナリスト
2019年は平成最後の年ですが、新年早々から70年越しの懸案である北方領土交渉が本格的に動きだします。まず年明けに河野外相が訪露してラブロフ外相と会談。2人は日露領土交渉の「責任者」に任命されており、安倍首相とプーチン大統領との首脳会談のお膳立てをすることになりました。つまり、首脳会談の時期など会談の段取りを打ち合わせするのが一番の目的です。当面のヤマ場は、1月下旬に予定されている日露首脳会談です。
すでに米ソ冷戦時代に取り決められた「日ソ共同宣言」(1956年)を基礎に交渉を開始することで合意していますが、宣言では「平和条約の締結後に、歯舞・色丹島を引き渡す」と書かれているだけで、プーチン大統領が主張しているように、2島をいつ、どういう態様で引き渡すかは決まっていません。日本側は当然、2島の主権付き返還を要求するでしょうが、プーチン大統領がどう出るか予断を許しません。ロシア側は、米国が日米同盟を根拠に、返還された2島に軍事基地を建設するのでは、と懸念、米側の具体的な保証がなければ返還できないとの立場を主張する見通しです。その時、安倍首相はどう答えるのか。事前に米側との話し合いが必要ですが、トランプ大統領が簡単にOKするかどうかは不透明です。
もう一つ、大きな問題は、日本はこれまで「国後、択捉島も日本固有の領土」と主張してきましたが、その旗をあっさり降ろしていいのかという点です。これには戦後、「北方領土」というワードを考え出し、4島一括返還をずっと要求してきた日本の外務省が強く反対しています。河野外相が記者会見で質問を4回もパスしたのも、首相と外務省官僚との板挟みにあったからではないでしょうか。安倍首相は歯舞・色丹島返還と、国後・択捉島の共同経済活動を組み合わせた「2島プラスアルファ」案での決着を目指していると言われています。だが、野党側は2島だけの返還では国民が納得しない、と反対の意向を示しています。この問題をどうまとめるかは、国内の世論統一のためにも大事です。 その上で、今年6月に日本で開催されるG20首脳会議に合わせて、プーチン大統領との首脳会談を設定し、大筋合意を目指すというのが日本側の目論見です。だが、それまでに日露だけでなく、日米との協議もまとまらなければ首相在任中の平和条約締結は厳しくなります。旧ソ連とロシアの過去の歴史を調べると、ロシアは国際情勢が厳しくなり、なんらかの譲歩が迫られた時に負の決断をする傾向があります。
今の情勢を見ると、ロシアは米国と軍事面で対立し、米国は中国と経済面で拮抗している状況です。そうなるとロシアだけでなく、米国も軍事面で譲れない情勢と言えます。つまり、日本にとって不利な情勢にあることは間違いありません。こんな時に安倍政権が北方領土交渉で前のめりになり過ぎると大ケガの元です。要は安倍政権が、情勢を十分把握して対応できるかどうかです。政権浮揚のために目先の利益を優先するのではなく、国益を重視してじっくり決断しなければ、交渉上手のロシアの術中にはまってしまうでしょう。
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