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2007-06-29 00:00
日米同盟に変革のとき来たる
田久保忠衛
杏林大学客員教授
日米同盟がいかに重要かなどは改めて説く必要もなかろう。ユーラシア大陸でロシア、朝鮮半島、中国という容易ならざるしたたかな国々に直面し、独自でそれに対抗する知恵も力も持たない日本が米国に依存するのは当然である。しかし、日本の向かうべき目標は「日米同盟」の維持ではない。このケジメがはっきりしないから米国にちょっと肩すかしをくっただけで日本はパニックに陥る。1971年の「ニクソン・ショック」はそのいい例ではないか。
そこで気になるのは、最近米国の一部に出ている「日本軽視」あるいは「日本無視」論である。第一は、ジョージワシントン大学のデイビット・シャンボウ教授が5月30日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に書いた「きちんとした政策には工夫が必要」と題する一文だ。複雑化するアジア情勢に対応して米国はアジア政策を再検討すべきで、その場合重視すべきは中国とインドであって日本はアイデンティティも影響力もなくなった、と述べているのである。日本が存在感を失ったのは歴史認識問題で致命傷を負ったのが理由だという。
第二は、ティモシー・キーティング米太平洋艦隊司令官が5月12日に北京で記者会見し、中国が機動部隊の建設に関心を示しているのであれば米国は手助けしようと発言したことである。正確には「不必要に緊張を引き起こしたくないのだが」と断ったうえで、「もし中国が機動部隊の建設に進むのであれば、われわれは彼らが要求する範囲内で、またわれわれができる範囲内で建設計画に手を貸したい」と述べた。欧州諸国による対中武器禁輸解除に頭から反対した米政府だが、太平洋艦隊司令官という軍のトップが政府の方針に反する発言を堂々としている。
第三は、ブルース・ライト在日米軍司令官が6月12日に都内の日本記者クラブで行なった発言だ。ライト司令官は普天間飛行場の移設や在沖米海兵隊のグアム移転などで日本が負担すべき額は「260億ドル(約3兆2200億円)程だ」と述べたうえで、「大きな額と思うだろうが、有事や戦争がこの地域で起きた場合、比較にならない(被害)額になる。はるかに安く済むということだ」と語ったのである。「米軍が守ってやるのだから、3兆円ぐらいは積極的に負担しろ」との気持ちが込められている。
米国は言論の多様性が認められた社会であるから、一部の人々の発言を取り上げて一般化するのは危険だ。が、キーティング、ライト両司令官は軍当局者であるし、政府と無関係とは言い切れまい。キーティング発言は民主党の浅尾慶一郎参議院議員が6月19日の参院外交防衛委員会で取り上げたが、久間章生防相も麻生太郎外相もさして重視していないような答弁に終始していた。日米関係に波風が立たないのは大いに結構だが、対米依存度が過多になってしまうと、日本はそのこと自体にも気付かず、危機感は緩んでしまう。そろそろ日米同盟もオーバーホールする時期に来ているのではないか。
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