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2019-02-01 00:00
やはりヒラリーが動き出していた
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)の米大統領選挙民主党予備選挙出馬に呼応するかのように、正式にはまだ出馬宣言をしていないバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)に対する包囲網が形成されつつあります。民主党エスタブリッシュメント、サンダース議員がウォール街民主党と呼ぶ勢力がこの包囲網形成を行っています。こうした動きの裏にはきっとヒラリー・クリントンがいるだろうと思っていましたが、ヒラリーが動き出していることを示す記事が出てきました。ヒラリーがキングメイカー気取りで、カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員、ジョン・ヒッケンルーパー・コロラド州知事、エリック・ガルセッティ・ロサンゼルス市長といった人々と米大統領選挙に関して議論を行ったという記事が出てきました。ヒッケンルーパー知事とガルセッティ市長以外のハリス、ブッカー、ウォーレンの各連邦上院議員は、これまでにも民主党の有力候補の顔ぶれという記事では必ず名前が出て来ていました。ジョー・バイデン前副大統領、サンダース議員、ビトー・オローク連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)が人気のトップ集団とすると、それに続く二番手集団を形成している人物たちです。
これらの人々がヒラリーに面会を求め、助言を求めている、議論を行ったということは、ヒラリー派の色がつくことを厭わないが、表面上は党の融合と団結を打ち出していこう、ということになります。ヒラリー派宣言ということになります。こうなると、問題は、バーニー・サンダースと彼を支持する人々との戦いということになります。サンダース派とサンダース支持者の数は多くありません。社会主義者を自認する人が進歩主義的、かつ大企業、ウォール街を敵に回す公約を主張しているのですから、多数派にはなりません。前回もヒラリーが民主党の大統領選挙候補者となりました。
しかし、民主党自体が盛り上がらず、全体に支持が広がらなかったのは、民主党予備選挙でサンダースが善戦したことで、ヒラリーとサンダースと間の攻撃合戦がずっと長引き、その結果、ヒラリーは共和党側からの攻撃と共に身内である民主党内からの激しい攻撃にも晒されるということが原因になりました。民主党全国委員会がヒラリーを贔屓していたことも明らかになり、党の大統領選挙立候補者を決める民主党全国大会もしゃんしゃん大会とはいかず、サンダースを支持する人々が抗議の声を上げ、サンダースがどうか止めてくれるようにと懇願する姿がありました。こうしてみると、ヒラリーからすれば、自分が大統領になり損ねたのは、共和党の攻撃のせいというよりも、サンダースからの攻撃の方が原因として大きいということになります。
サンダースとサンダースを支持する人々は、現在、サンダースに対する攻撃が既に始まっていることに怒りを持っているはずです。そして、こうした攻撃は、民主党エスタブリッシュメントがやらせていることも認識しているはずです。そうなれば、ヒラリー派という色がついた人物を攻撃することはあっても、応援することはないでしょう。そうなれば、結局、前回2016年と同じことの繰り返しということになります。現職大統領という最大のセールスポイントを利用するトランプが有利に事が運ぶということになります。民主党にとっての最大の選挙対策は、ヒラリーに引っ込んでおいてもらうということになります。しかし、それは不可能なようです。それは、ヒラリーの側近が「予備選挙の動向如何で物事は大きく変化する可能性を持っている」と語り、ヒラリーの出馬の可能性を匂わせていることからも明らかです。
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