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2019-02-19 00:00
(連載1)嘘や不正が森羅万象に宿る時代
中村 仁
元全国紙記者
「私は総理ですから、森羅万象を担当している」との安倍首相発言を借りれば、「ウソや不正が森羅万象に宿る時代」です。政府の統計不正問題で厚労省が集中砲火を浴びています。厚労省に限らず、ウソや不正、虚偽と疑われることが国内では、安倍政権、主要官庁、大企業、大学、さらに海外では米中のトップ、世界的自動車メーカーに広がっています。なぜでしょうか。首相の「森羅万象」発言は、この言葉の意味をよく考えないで口走ったのでしょう。真意は「あらゆる分野の情報が飛び込んでくるので、ひとつひとつを十分にチェックできないこともある」という程度だったのでしょう。しかも、できもしない「森羅万象を担当」の「担当」はさらに余計でした。神になったとしてとしても、「担当」できるものではありません。
ともかくこの「森羅万象」といえば、ウソ、不正、虚偽が今や「森羅万象」に広がっていることです。「限りなく茂る樹木、および万物やあらゆる現象」に広がっています。厚労省の毎月勤労統計の不正、不明朗な扱いについて、各紙の社説「統計の正確性に対する認識があまりにも軽い」(朝日、1/24)、「調査実態を解明し、再発防止の徹底」(読売、2/5)などはまとも過ぎて視野が狭い。
うその世界的な広がりのなぜを考える必要があります。日産会長だったゴーン被告の話をしますと、捜査が進むにつれ、「絶対絶命」との見方がやはり広がっています。並はずれた金銭欲の持ち主がリーマンショック(世界金融危機、08年秋)で、私的な投資に巨額の損失が発生した。銀行から数十億円の追加担保を要求され、次々に不透明な資金操作を始める発端となったと考えられます。次に、経済統計で最も悪質なのは、厚労省どころか、中国のGDP(国内総生産)の伸び率(経済成長率)です。17年の成長率は6.8%で、当初発表の6.9%から下方修正しました。景気が急減速していますから、引き下げたのは当然としても、実態はマイナスという見方は根強い。
中国の景気減速につれ、中国市場への輸出が落ち込み、日本含めた海外の景気に重大な影響を与えていますから、虚偽の成長率は罪が重い。習近平体制を維持するために、停滞が始まった経済実態を正直に伝えることがますますできなくなった。だから厚労省の不正統計問題は大したことではないということではありません。視野を広げ、ウソや虚偽の広がり見つめる時です。トランプ米大統領は株価の下落を防ぐために、FRB(連邦準備理事会=中央銀行)の利上げの動きをけん制しました。FRBの政治からの独立性に踏み込むことは禁じ手(禁止事項)のはずで、法を逸脱しています。株価の下落は大統領選に不利となると、考えているのです。(つづく)
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