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2019-02-25 00:00
女性活躍社会に立ちはだかる壁
鍋嶋 敬三
評論家
安倍晋三首相が内閣の最重要課題の一つとして目指す「女性が輝く社会」のかけ声にもかかわらず、国際社会の評価は厳しいものがある。ダボス会議で知られる世界経済フォーラム(WEF:本部スイス)による「世界男女格差報告(The Global Gender Gap Report 2018)」によると、日本は調査149カ国中110位に甘んじている。経済、教育、健康、政治の4分野の男女格差を数値化したもので、日本は先進7カ国中最下位、アジアで日本より下位で目立つのは韓国(115位)ぐらいだ。1位は毎年アイスランド、4位まで北欧が占め、下位にはサウジアラビア、イラン、最下位のイエーメンなど女性の地位が低いイスラム諸国が軒を連ねる。WEFが初めて報告を公表した2006年に日本は80位だったが、下降を続け第2次安倍内閣発足翌年の2013年には105位、その後の6年間で順位を6つ下げ、12年間で30も下げたのだ。
日本の評価では、健康(41位)、教育(65位)で上位の半分に入るものの、経済が117位、政治に至っては125位にまで下がる。いずれも2013年より後退した。WEFは2006年の第1回発表以来の傾向が続けば、比較できる106カ国については格差是正に108年間かかると計算。特に最も格差が大きい経済面では202年、政治面でも107年を要すると見ている。安倍内閣の下で女性活躍推進法が2015年施行され、「女性活躍加速のための重点方針」が毎年決定されている。あらゆる分野での女性の活動のため、男性の意識変革を促す「男性の産休」や育児休業など制度面の改革、待機児童解消や介護離職ゼロに向けた基盤整備などの政策課題が網羅されているが、多様な生き方を認める社会の在り方そのものが問われている。
安倍首相は日本がイニシアチブをとって始めた「国際女性会議WAW!」へのメッセージ(2017年)で女性活躍を「成長戦略のど真ん中に位置付けた」と強調した。女性の出産、育児に当たる年齢層で就業率が低下してへこむ「M字カーブ」の問題は「着実に解消に向かっている」と述べた。しかし、内閣府男女共同参画局の「女性の年齢階層別労働力率(総務省労働力調査「基本統計」2016)によるグラフでは、日本の「M字カーブ」はなお顕著だ。WEF報告で3位のスエーデンは働く年代の15~49歳まで一貫して上昇、ピークの年代では90%に達している。一方、日本は25~29歳のピーク時の70%台から下がりはじめ、35~39歳代では60%台まで下がってしまう。もう少し数字を我慢をして頂きたい。経済や政治の分析は統計数字抜きには成り立たないからである。
女性活躍に立ちはだかる壁は特に政治分野で部厚い。厚生労働省による「女性の政治参画マップ2018」によると、国会議員に占める女性の割合が日本は157位で世界最低。都道府県議会の議員が15%以上あるのは3都県に過ぎない。地方公務員の管理職に占める女性の割合は平均9.7%(2018年1月)、15%以上は鳥取県と東京都だけだ。内閣府の男女共同参画についての世論調査(2016年度)では、政治の場で「男性が優遇されている」とする割合は18歳から60歳代までの女性で高く、「平等」と答えた割合は男性の50~70歳以上で高かった。ここから見えるのは、女性の成人世代のほとんどに不平等感が強く、社会の「実権」を握っている「男社会」への不満を反映している。また、女性が増える方が良いと思う職業について「裁判官、検察官、弁護士」を挙げた比率は女性が高い。社会の格差是正のためには民法をはじめ社会制度の基盤である司法の運用が大きくかかわっていることを女性が実感しているしるしであろう。安倍首相は多様性をテーマにした今年の第5回国際女性会議WAW!を機に「世界を変えていきましょう」とアピールしているが、足元の「男社会・日本」の変革なしには道遠し。何事をなすにもまずは自分からという「隗(かい)より始めよ」(中国の古典「戦国策」)である。
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