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2019-02-27 00:00
「国家統計省」の設置を提言する
加藤 成一
元弁護士
国会では連日のように厚労省の「統計不正問題」が議論されている。立憲民主党など野党側は、「毎月勤労統計」をはじめとする統計の不正操作があたかも安倍政権によって行われ、且つ、統計を不正操作しアベノミクス効果を偽装したと決めつけ、「統計不正問題」を奇貨として、安倍政権の実績であるアベノミクス効果を完全否定することに躍起になっている。とりわけ、「毎月勤労統計」の不正操作が明らかとなり、2018年の大半の実質賃金はマイナスであったと主張し、さらに、GDP統計についても、アベノミクス効果を喧伝するため、統計方式を変更し故意にGDPの数値を底上げし偽装した、などと安倍政権を徹底的に攻撃している。
しかしながら、周知のとおり、統計の不正操作は民主党政権時代にも継続していたのであり、当時の民主党政権にも重大な責任がある。安倍政権になってから初めて行われたのではない。加えて、今回の「統計不正問題」の根本原因は、与野党を超え、厚労省をはじめ長年にわたる各省庁における統計調査方法の時代に適合しない前近代性にある。例えば、非効率な全数調査、訪問面接調査、紙媒体による手作業、IT化の遅れ、などである。今後は、各省庁におけるバラバラな統計調査ではなく、権威のある中央統一省庁として、新たに「国家統計省」を設置し、所轄する「統計大臣」を置き、統計専門官の養成増員と地位向上、IT化の推進、人工知能活用など、統計調査の近代化が急務である。統計はいつの時代においてもすべての国策の指針であり基盤だからである。「国家統計省」の設置を提言したい。
ところで、立憲民主党など野党側は、「毎月勤労統計」の不正操作が明らかとなり、実際は2018年の大半の「実質賃金」がマイナスであったと主張し、アベノミクス効果を主張する安倍政権を厳しく追及している。しかし、6年間のアベノミクス効果により、20年来のデフレから脱却し、2018年の失業率が25年ぶりの2.2%まで低下し、2018年の有効求人倍率が27年ぶりの1.67倍の高水準となり、新たな就労者数が380万人も増加したことは紛れもない事実である。景気が回復し、これまで求人がなく就労できなかった非正規、派遣、パート、アルバイトなど比較的低賃金の主婦、高齢者などの就労が大幅に増えれば、主婦、高齢者を含む就労者全体の「実質賃金」が低下するのはマクロ経済学上も当然の現象である。したがって、景気回復期においては、「実質賃金」よりも全就労者の所得を合計した「総雇用者所得」こそが景気の動向と国民生活の実態を正確に反映する指標なのであり、安倍政権下の「総雇用者所得」は名目実質ともに底堅い動きを示し、プラスに推移している。上記理由により「実質賃金」よりも「総雇用者所得」を重視する民間エコノミストも多いのである。
GDP統計については、2016年に新たに「研究開発費」を積算するなど、欧米先進国の国際基準に適合した新たな統計方式の採用は当然のことであり、新基準の採用により故意にGDPの数値を底上げし偽装したとの立憲民主党など野党側の批判は当たらない。なぜなら、失業率の大幅な低下、380万人の新規雇用拡大、年間3000万人を超える訪日外国人観光客の増加、2万円を超える日経平均株価の上昇、企業倒産の減少、戦後最高の企業収益、大企業・中小企業の定期昇給を含む名目賃金上昇、税収の増加、などの6年間のアベノミクス効果により、名目GDPの伸び率は12パーセントを超え、60兆円以上も増加しているからである。したがって、立憲民主党など野党側による「GDP偽装」の主張は、ひたすら安倍政権に打撃を与えるための事実に反する「印象操作」に過ぎない。以上に述べた通り、「統計不正問題」でアベノミクス効果と実績を到底否定できないことは明らかである。立憲民主党など野党各党も、「統計不正問題」を安倍政権打倒の政局に利用すべきではなく、与野党を超え、すべての国会議員は国家統計の一元的管理運営を行う前記「国家統計省」の設置に超党派で尽力すべきことを提言する次第である。
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