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2019-03-07 00:00
(連載2)ブレグジットの背後にあるロシアの存在
河村 洋
外交評論家
同様にロンドン・スクール・オブ・エコノミックスの故森嶋道夫名誉教授も『イギリスと日本』および『サッチャー時代のイギリス』といった自らの著書で「サッチャー氏の視点論点はメソジスト信仰に強く基づいているために、全てを善悪の観点で見てしまう」と繰り返し述べていた。これは市場経済への揺るぎない信頼と社会主義の拒絶に典型的に表れている。社会経済および政治の問題へのそのように過度に単純化された理解は、伝統的なイギリス保守党政治家よりもアメリカのグラスルーツ保守派のものに近い。同様に、今日の自称サッチャー主義者や欧州懐疑派は英欧間の相違にばかり注意が向くほど視野が狭いので西側の民主的な手続きへのロシアの工作など、国際政治での多次元の問題には注意も払わない。彼らは先のアメリカ中間選挙で落選した極右のダナ・ローラバッカー元下院議員のように偏向した考え方の持ち主で、実際に彼は2017年3月の下院外交委員会で「ロシアはもはや共産主義国でもないので、クレムリンの情報工作など有り得ない」とまで言い張った。
そうした中でオープン・デモクラシー・UKは、主要なメディアやシンクタンクからあまり注目されていないブレグジット運動の背後にある汚れた資金を追っている。バンクス氏からリーブ・EUへの献金に関しては徹底的な捜査が必要で、さらにこの事件はトランプ氏の選挙運動をめぐる疑惑のようにプーチン氏の西側民主主義への介入と深く関わった重大な懸念事項である。オープン・デモクラシー・UKはブレグジットに関する別のスキャンダルについても、北アイルランドのプロテスタントの民主統一党(DUP)が自分達のブレグジット運動のために疑惑の資金をインドから、そしてサウジアラビアの情報機関関係者から受け取ったと明らかにしている。彼らの運動はロシアからも資金を得ているかも知れないので、さらなる調査が求められる。
ともかく、ブレグジットの背後には非常に多くの不都合な事実が隠されているように見受けられる。議会内および外交でのやり取りがどうあれ、今回のブレグジットは突然で準備不足である。私はイギリスが未来永劫にわたってEUに留まれと言っているわけではない。しかしEU帰属投票の結果はイギリス国内外で混乱をもたらすだけになっている。経済にも悪影響を与え、金融機関のフランクフルト移転や日本企業の自動車工場閉鎖にもいたっている。そうなると西側同盟の弱体化を安全保障の重要課題としているプーチン氏を喜ばせるだけになってしまう。ブレグジット投票の妥当性についても、国民の意志を反映した結果なのかどうか疑わしい。幸運にもメイ政権とEUはウエストミンスターでの度重なる離脱法案否決によってブレグジットの日程を延長しようとしている。そうした混乱から、イギリスとヨーロッパの当事者はNCAなど公的機関およびオープン・デモクラシー・UKなどの民間機関による犯罪調査の結果を待ってもよいのではないかと思われる。イギリス政府法律顧問のジェームズ・イーディー氏の発言とは異なり、「プーチンのブレグジット」の妥当性については法律のうえでも国家安全保障のうえでも再検討することに遅すぎるということはない。(おわり)
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