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2019-03-15 00:00
冷戦終焉とINF
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
INF条約(Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty)とは中距離核戦力全廃条約のことである。中距離とは中射程500キロから5500キロの弾道ミサイル、巡航ミサイルであり、これらを全廃することを、当時のレーガン米大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が1987年合意した。その数年後に両国合わせて2700基が廃棄された。長く続いた核軍拡競争に歯止めがかかるとともに、1989年のベルリンの壁崩壊、冷戦の終焉の引き金ともなった歴史的な合意である。
しかし2010年代になってロシアが巡航ミサイルの開発をはじめたとして、アメリカは条約違反の疑いありと警告。さらに、中国がミサイル開発をはじめたことで、トランプ政権が業を煮やして、ついに今年2月1日にINF条約破棄をロシアに通告。ロシアもこれに呼応することとなり、半年後に条約は失効する見通しである。
核兵器削減を巡ってはINF以外にも、米ソ、米ロ間で重要な取極めがあった。1991年4月にはブッシュ(父)とゴルバチョフによる第一次戦略核兵器削減条約(STARTⅠ)が合意され、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の半減が約束された。1993年1月にはブッシュ(父)とエリツィンによるSTARTⅡでさらなる半減の合意。2002年5月ブッシュ(子)とプーチンの間で戦略攻撃戦力削減条約(モスクワ条約)が合意された。これらの3つの条約はほとんど成果が上がってなかったのに比べ、実効性を伴っていたのがINF条約だっただけに、その破棄は極めて残念としか言いようがない。
2009年には、当時のオバマ大統領がプラハで「核廃絶は道義的責任」という歴史的な演説を行ない、ノーベル平和賞を受賞した。この時は「世界終末時計」が少し戻った感があるが、今回のトランプ大統領の決定で、また進んでしまったようだ。米ロをはじめ、核保有各国のパワーバランスによって核の使用が抑えられている現実は認めざるを得ないが、均衡のレベルを下げることは、まさに各国に課された人類への極めて重い「道義的責任」である。
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