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2019-03-27 00:00
「大阪クロス選挙」は政治の私物化に他ならない
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会代表)と大阪市の吉村洋文市長(同政調会長)は、公明党との交渉が決裂して実現が困難になった「大阪都構想」を強引に推進させるとして共に辞職し、知事・市長の立場を入れ替えて出馬することを正式表明したという。己の野心を実現せんがために法の隙間を利用する。これこそ、住民無視・政治の私物化・党利党略以外の何物でもない。
大阪では、すでに先の2015年5月17日「大阪都構想」なるものについて賛否を問う住民投票を行っていて、僅少差とはいえ「反対」が「賛成」を凌駕し、時の府知事が敗北し引責辞任している。あれから今日までまだ4年に満たない。件の「構想」がかりに百歩譲って良いものであったとしても、新たな情勢変化が無ければ原理的に民意は変わらないとしなくてはならない。そう論理的思考するのが真っ当な判断というものである。これは真っ当ではない。勝つまでやらないと気がおさまらないというのでは、それは仇討ち・子供の喧嘩、はたまた「傘碁」の落語噺、「善の実践」たるべき政治にはならない。率直に言って、ならない政治をならせているところが、近年の大阪府政・市政の歴史であった。
そもそも「大阪都構想」なるものは大阪府政と大阪市政の二重行政が非効率だということから始まった。たしかに、数多の政令都市の中でも大阪市はオール大阪府の中におけるシェアが大きいので二重行政となるのは問題があるだろう。そうであれば国と府行政の中で工夫していけばよいはずではないか?。結党のワンポイントイッシュウが「大阪都構想」であったからこれに固執するのであろうが、他にも解決策が無いというものでもなかろうに・・・。この度の判断は、友党である自民党幹事長からすらも「思い上がりだ!」と批判されているという。その幹事長氏にはまた別の思惑も有りそうだから多少値引きするとしても、その評価はむべなるかなである。そもそも京阪神工業地帯の中心都市大阪の生産力は、大阪万博を最後に80年代から急激に衰退に入り、日本は東京・大阪の二眼レフ国家から大阪が欠け落ちることで一眼レフへと構造変化してしまった。大阪は文字通り世紀末のお笑い芸人文化の街と化し、日本経済の弱体化の一因ともなっていった。
いまや、安倍晋三氏の悲願「改憲」を共にする大阪府市の首長を援護すべく苦しまぎれに考え出したのが再度の万博と隣地のIR施設という。70年万博が重工業都市大坂の終焉からお笑い芸人の大阪に変わったように、よもや2025年万博によって「バクチと遊興都市大阪」になろうというのでもあるまい。もう一度、「大阪」には、江戸時代に見せたはなやかな「大坂」、橋下府政が破壊してしまったあの香り高い文化と知性の「大坂」を蘇らせてほしいものである。
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