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2019-04-09 00:00
横畑内閣法制局長官発言と国会炎上ビジネス
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
最近、国会審議の劣化が著しいということはないだろうか。ほとんどの国民は、「国会なんて昔からそんなものなのでは?誰も期待していませんよ」といった雰囲気なのではないかと思うが、それにしてもやはり劣化していないだろうか。遅刻を擁護するつもりはなく、大臣の資質を擁護するつもりもないが、3分遅刻すると5時間の審議拒否というのは、いかにも低レベルである。
横畠裕介内閣法制局長官が野党質問を「批判」したとされる問題でも、実際には横畑長官が「このような場で声を荒らげて発言」と、やや皮肉めいた発言をしたとされる、それだけのことである。皮肉には皮肉で応酬する、といった洗練されたやり取りくらいはあってもいいと思うが、「どっちが偉いか分かってんのか、貴様」、といわんばかりに官僚イジメをする国家議員の行動から、国民が何か利益を得られるとは思えない。
これによって安倍政権の驕りが見えた、とか大げさな結論を導き出そうとするのも、いただけない。挑発して相手の失点を狙う、というのは、ほとんど炎上ビジネスのようなものなのではないか。特段、中央官僚の味方をしたいと思っているわけでもないが、特段、国会議員は常に官僚に威張れる、ということを強調したい気持ちもしない。国会議員も公僕であり、公益に奉仕する、ということが最高の行動原理である、ということについて、もう少し社会全体で真面目に考え直してみるべきなのではないだろうか。
横畑議員の失言を引き出した小西洋之参議院議員については、私自身が意味不明な罵倒をされたことがあるので、やや思い入れを持たないわけではない。小西議員といえば、「幹部自衛官暴言事件」などもあり、国会議員による官僚に対するコントロールには、強い信念をお持ちのようだ。だがそうした政策的課題は、「声を荒げて発言」と言われたくらいで大問題だとみなすといったような、そういった小さな話なのか。集団的自衛権及び安保法制は違憲だという信念を持つ小西議員にとって、安保法制成立に尽力した横畠内閣法制局長官は、あらゆる機会を通じて攻撃したい対象であると想定される。だがもしそれが伏線だとすれば、今回の事件が持つ意味は、非常に深刻である。
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