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2019-05-10 00:00
官邸はプーチン大統領に対して甘い幻想を抱くべきではない
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
昨年11月に安倍首相とプーチン大統領が「日ソ共同宣言を基礎にして平和条約交渉を加速する」との合意をしたときに、私は二つの点で衝撃を受けた。一つは、日本政府が基本方針として常に述べて来た「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」という東京宣言を捨てて、歯舞、色丹の2島にしか触れていない日ソ共同宣言のみを基礎にするとしたことだ。これは、事実上日本側は、2島返還で手を打つと述べたに等しい。(首相は国会答弁でこれまでの基本方針は変えない、とも答えているが。)第二は、プーチンは日ソ共同宣言を認めているので、「歯舞、色丹の2島返還なら手を打つだろう」といった考えをもとに首相が合意した可能性もあるということだ。私は7年も前から、プーチンやロシア外務省が、「56年宣言で2島引き渡しをしても、それは主権の引き渡しを意味しない」といった詭弁を弄していることに警告を発し続けてきた。
したがって「2島返還プラスα」を、参院選挙前に日露交渉の成果として宣伝できると考える官邸の対露認識の甘さに驚いたのだ。この場合のαとは、国後、択捉はロシア領と認めた上で経済協力を行うことに外ならない。このような首相官邸の対露認識が国会でも議論されている最中に、それに関連したかなり具体的な情報がある雑誌の最近号に、以下のように掲載された。「『もう総理の任期中に北方領土問題は解決できない』 通常国会が始まって間もない二月初旬。周辺にこう漏らしたのは、安倍晋三首相の主席秘書官今井直哉だ。……『安倍が最も信頼する側近』とされる今井の言葉は、永田町ではイコール安倍の言葉と受け止められる。今井は昨年末、日露首脳会談の地ならしのため、安倍の名代として極秘で訪露しているだけに、その言葉に周辺は驚いた。」(『文藝春秋』2019年4月号)
この記事は複数の政治部記者が「赤坂太郎」のペンネームで書いている名物コラムである。この記事と今井発言が事実とすれば――おそらく事実であろう――筆者からすれば「ようやく!」の感を否めない。しかしそれは遅きに失した。今井秘書官をはじめ首相官邸は、あまりにも長い間プーチン大統領に対して甘い幻想を抱き続けた。
以下は、ロシアのメディア「RBK」(3月12日)からの引用である。「ロシア大統領府はクリル諸島の問題については結論を出している。島を日本に引き渡さないということである」「ロシア側は、島の引き渡しを直接拒否することは、外交的配慮から控えている」「ペスコフ大統領報道官によると、日本との交渉で問題となっているのは、島の引き渡しではなく、それとは関係なしに平和条約を締結することである。彼はまた、交渉はたいへん複雑で、何年もかかる可能性がある、としている。」「ロシアの専門家によると、今年6月の日露首脳会談時にも、また安倍首相の任期中にも、平和条約交渉の前進はない」「ロシア側が島の交渉で出している諸条件は、日本にとって到底受け入れ不可能で、ロシア側もそのことを承知の上で日本にそのような条件を突き付けている」
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