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2019-05-27 00:00
令和日本は高齢期の備えを
松井 啓
初代駐カザフスタン大使
第二次世界大戦後、日本は短期間で奇跡的な経済成長を遂げ、1970年代の2度にわたる「オイルショック」を切り抜け、1976年から先進国サミットに参加し、1986年にはGDPではドイツを抜きアメリカに次ぐ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」となった。1989年に63年間続いた昭和は平成に改元され、米ソ冷戦構造が崩壊し、日本のODA(政府開発援助)は1991年に米を抜き10年間世界トップであったが2001年に米に抜かれた後、英、独、仏にも抜かれ5位となっている。日本のGDPは2010年に中国に抜かれ世界3位に落ち中国との差は開いている。日本の国連分担金も2013年までは米に次いで第2位であったが2016年以降中国に抜かれた。
このように平成時代は「失われた30年」とも呼ばれ、日本を巻き込む戦争はなかったので「平静」ではあったが、経済は停滞し国際的な地位は低下した。数度の自然大災害に見舞われたが、天皇の全身全霊の国民に寄り添うお姿により国民統合の象徴である天皇像が定着した。また天皇は戦争による被害を受けた諸国へ度々御訪問され和解と友好関係の促進に大きな足跡を残された。平成時代は63年続いた壮年期の昭和時代から高齢期に向かう体質の調整期間であったといえよう。本年5月1日、明仁天皇(86歳)の継承者として徳仁天皇(59歳)が即位され、元号は30年続いた平成に代り令和(麗しき調和)と改められた。「和を以て貴しと為す(聖徳太子の憲法17条冒頭)」日本に相応しい元号であるが、今上天皇は令和30年(2049年)には89歳となられることを十分認識しておくべきである。
「人生100年」時代になったと言われるが、日本の人口は2008年をピークに下降し2018年には1億2043万人となり、2024年には3人に1人が65歳以上となる予測があり、このまま人口減少が続くのは国家存亡の危機である。まず心理的な切り替えが必要であり、過去の成功にこだわることなく、時代のニーズに即応した雇用システムや社会保障制度の変革、所得格差の縮小、教育制度の改革、育児手当や教育費補助制度の改善等について国民全体の参画による議論の展開と合意形成、特に若い世代の地方及び国政選挙への投票参加は必須である。2020年(令和2年)には東京五輪、2025年(令和7年)には大阪万博が開催される。それまでに自然との調和を尊び、八百萬の神々が共存する日本古来の伝統や文化に基づく国家の品格と明るい未来像、国際社会における立ち位置を明確にしていくべきである。
戦後74年間一度も改正されていない日本国憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」安全と生存を保持すると記されているが、国際関係が流動化し兵器が進化している現在、日本の安全保障を確保するための現実的な議論が必要である。また、憲法第1条では「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく。」と記されており、第126代の今上天皇まで少なくとも1500年続いてきている万世一系の皇位は人類史上稀有な存在であり、今後いかなる形で保持していくかついても国民的合意が不可欠である。国際関係では同盟関係にあるアメリカとの関係を基軸とする民主主義を基盤とするアジア近隣諸国、豪、印、欧州諸国との連携を強化し、自由で公正な貿易関係、経済・金融面での新しい国際秩序の構築、海洋開発、環境保全、宇宙探査・開発分野での国際協力の推進を国際社会に呼びかけ、人類全体の調和と平和の構築に貢献していくべきであろう。
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