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2019-05-31 00:00
「横浜カジノ構想」には代替的開発計画で抗せ
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
<獅子身中の虫>というたとえは、「梵網経(ぼんもうきょう)」というお経本二巻のうちの下巻にある用語だという。獅子の体内で養われている虫が、かえって内臓を食い破って獅子を滅すという。そのことから、「仏の弟子なのに仏教に害を与える者。転じて、内部の者でありながらその組織などに害を与える者にいう」(三省堂『大辞林』)とある。多くの国民が疑問を感じ、少なからざる人々が反対運動を展開してもいるIR=統合型リゾート施設という名の博奕場の建設構想。国内に最低3か所は作ると安倍政権は力んでいる。その中の有力地の一つとされているのが横浜市。ここは安倍内閣大番頭の菅義偉官房長官の金城湯池。大阪と並んで本命と目されている。なにしろ、首都圏3800万人の人口を擁し、羽田国際空港からも目と鼻の先、しかも豪華客船が停泊できる国内最大の港湾都市横浜、世界中かも博打打ちを集めるには格好の都市=横浜。
その具体的な設置場所が横浜港にある「山下ふ頭」だが、ここの再開発をめぐり「地元の物流会社などで作る団体が、カジノを含むIR=統合型リゾート施設の誘致には反対だとして、国際展示場などを中心とした再開発を提案するため、新たな組織を設立しました。(中略)再開発をめぐり、カジノの導入に反対している『横浜港運協会』は15日、横浜市中区で記者会見を開き、新たな組織、『横浜港ハーバーリゾート協会』を設立したと発表しました。この協会は、カジノの導入に反対する物流会社など240社余りが参加し、民間主導で再開発計画を提案するということです。会長に就任した藤木幸夫氏は、世界最大級の国際展示場を設置して多様なイベントを開催したり、国際クルーズ船の拠点としたりすることで採算は取れるとし、『カジノにはギャンブル依存症などの問題がある。将来の横浜をよくしていく対案を出したい』と話していました」(2019/05/16 NHK)。
実に正常な感覚にして建設的提案である。この代表に名乗り出た藤木さんは、政権与党の有力支援者にして、相模の国では官房長官氏のパトロンにして、その今を時めく権勢のバックボーンでもあると噂されている。いわば安倍内閣とギャンブル場建設を目論む強欲の人々に対して、この人はまさに「獅子身中の虫」の存在となった、というわけだ。そもそも、この国におけるカジノ構想なるもの、その源をただせばトランプ米大統領の娘婿ユダヤ人ジャレッド・クシュナー上席顧問につながるカジノホテル超大手ラスベガス・サンズの経営者=同じユダヤ人富豪シェルドン・アデルソン、あのシンガポールのマリーナベイ・サンズの経営者でもあり、マカオのカジノも支配するボスである。その超大金持ちが日本のカジノ市場を狙っているのだ。横浜も大阪も北海道?も、この男の虎口に居るのである。
こういう蛇ににらまれれている横浜だが、これによって危機が回避できるか否か?これからの展開については目が離せない。「藤木氏は『いま、(戦争直前の)昭和14年、15年の空気を感じる』とこう続けた。『(当時は)神奈川県の新聞社も1社になり、みんなモノを言わなくなった。言論統制ではないけど、一言いわなきゃいけないのに言わないんだ』」(2019/05/16 日刊ゲンダイ)と上記記者会見場で述べたという。むべなるかな!
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