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2007-07-21 00:00
北京の6カ国協議の結果をどう見るか
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
北京の6カ国協議は「次の段階」の履行期限を設定できないまま、8月中に作業部会、9月初旬に次の全体会議を開催することを決めて閉幕した。この結果の評価では、日本のメディアは新聞もテレビの解説も、相変わらずの「北バッシング」一辺倒で全体像を伝えていない。たとえば7月21日朝刊各紙の社説だけ取り上げてみても、「懸念されたとおり北朝鮮は引き延ばし戦術に出た。期限の設定を拒み、結論は持ち越された。ずるずると北朝鮮のペースにはまらないよう警戒が必要だ」(毎日)、「困難な作業は先送りされた。核・ミサイルの深刻な脅威の下にある日本としては、とても先行きを楽観視することはできない」(読売)、「このままでは北の核施設が無力化する前に6カ国協議の方が無力化しかねない」(産経)、「北朝鮮が抵抗し、期限を盛り込めなかった。期限がなければ時間稼ぎを許すことになる」(東京)といった具合に、北朝鮮批判の大合唱だ。
わずかに朝日新聞だけが、寧辺の核施設の「稼動の停止」と「封印」の履行を評価し、「次の段階」として「すべての核計画の完全な申告」と「既存の核施設の無能力化」を細かく定め、「過去の失敗を繰り返さない」注意が肝心と呼びかけている。そして朝日は「申告」と「無能力化」に対応するのが、5者による「重油95万トン相当の経済・エネルギー・人道支援だ」と解説しているが、そうではない。
これは2月の「北京合意」に謳われてはいるが、北朝鮮がはるかに重視しているのは(1)テロ支援国家の解除、(2)米朝・日朝国交正常化、(3)軽水炉の提供である。北に対して「履行」を迫る以上、2月の「合意」で5カ国側が約束した「見返り」を与えなければならない。「履行」と「見返り」を同時並行で進めるという「同時行動の原則」が2005年の「共同声明」で確認され、2月の「合意」でも再確認されていることを忘れてはならない。
北朝鮮にすれば、自分たちこそ一方的に丸裸にされて、米側に騙されるのではないか、という疑心暗鬼を拭えないのだ。この相互不信は、ヒル米代表と金桂冠外務次官の間で個人的にはかなり修復されたようだが、今回期限設定に至らなかったのは、「拉致問題の解決なくして一切の支援なし。国交正常化もなし」という日本の強硬姿勢が多分に影響したとされる。6カ国協議の枠組みで朝鮮半島非核化の実現に協力するのか、それとも5カ国の足並みを乱しても拉致解決一本槍でいくのか、日本外交にとって選択の時だ。少なくとも、「北朝鮮の時間稼ぎ」などと一方的な批判で総括できる問題ではない。日本のメディアは無責任きわまりない。
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