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2019-06-29 00:00
(連載2)危惧される日本社会の内部崩壊
山崎 正晴
危機管理コンサルタント
人口100万人当たりの銃による死亡者数では、エルサルバドルの446・3人、米国の31・2人に対して日本は0・1人という低さだ。11年の東日本大震災の際、暴力的略奪や暴動はほぼ皆無、被災者たちは秩序正しく行動し、日本は世界の賞賛を浴びた。世界一安全な日本をつくり上げているものは、国家権力ではなく、数千年の稲作文化を通じて培われた、共同体への強い忠誠心と自己犠牲の精神だ。争いや落ちこぼれを無くすために「主義主張」を控え、「和」を重視してきた。これまでの数千年間、それが、日本人が生きるための最善の道だった。
ところが、ここに来て、それが通用しなくなってきた。グローバル化の波の中で、名だたる大企業の経営トップ自らが「終身雇用終結宣言」を出し、忠実な従業員たちを不安に陥れている。大企業が史上最大の利益を出す中で、給与は先進国中最低レベルに抑えられている。残業は禁止され、突然、これまで求められていた「協調性」より「個性」を出せと言われる。物心がついてから、半生にわたって躾られ教えられてきた道徳や行動様式が通用しなくなった。貧富の格差は拡大し、生活レベルは低くなった。こんな状況では、精神に変調を来す方がまともだ。
より「まとも」な人たちは「自殺」を選んでいる。警察発表による日本の自殺者は年間約2万人で、世界18位の多さだが、実際はそれよりはるかに悪い。自殺者とは別に年間8・8万人の行方不明者(その15%を自殺と推定)と17万人の変死者(WHO〈世界保健機関〉は変死の50%を自殺と推定)がいる。これらを合計すると、日本で1年間に12万人が自殺していることになる。福島県会津若松市や東京都小金井市の全人口に相当する人たちが、「毎年」自らの意思で、この世から消えているのだ。この数を人口10万人当たりに換算すると92人となり、自殺者数最多のスリランカ(35人)をはるかに超え、日本は世界最悪の自殺国となる計算だ。
殺人件数の世界最多はエルサルバドル(16年)で、人口10万人当たり年間83人が殺されている。対外(他殺)か対内(自殺)かの違いを別にすれば、「人の命を奪う」という究極の加害行為において、日本は、エルサルバドルを超えて世界最悪の国になる。脳内出血のように、外面は平和に見える日本で、内部からの崩壊が始っているのではないか。「社会の死」に至りかねないこの事態への対処に、もはや一刻の猶予も許されない。(おわり)
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