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2019-07-03 00:00
対イラン外交、日本は独自路線を模索せよ
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
中東の大国イランはかつて古代オリエント文明の中心であり、日本人にも人気の数々の世界遺産を保有している。ペルシャ帝国が支配したのちは、アケメネス朝、セルジュク朝、ティムール朝、サファヴィー朝など、世界史で覚えた馴染みの王朝が続いた。中東諸国の中ではトルコとともに、日本が長年にわたって友好関係を維持してきた。
ところが最後の王政となるパーレビ政権の1979年にイスラム革命が起こり、宗教家ホメイニ氏が実権を掌握すると、アメリカとの関係が急速に悪化してしまった。イスラム強硬派によるアメリカ大使館人質事件、いわゆる「テヘラン事件」も発生した。日本とイランの友好のシンボルだった「イランジャパン石油化学プロジェクト(IJPC)」も、この煽りを受けて頓挫してしまった。レーガン、ブッシュなど歴代の米大統領は、イランを「悪の枢軸」と称して敵対感を露わにしてきた。特にイランが核兵器の開発と所有を隠密で進めているとの観測に基づき、同盟国とともに対イラン核抑止合意を取り付けた。ところがトランプ大統領は、イランが様々な抜け道を使って核開発を進めているとして、合意から離脱してしまった。
アメリカもかつては中東諸国の石油に頼っていたが、最近の国内のシェールガスの採掘により、エネルギー確保の観点ではあまり中東に気を使わなくても良くなった。トランプ政権になると余計にその傾向が強まり、エルサレムをイスラエルの首都として認めるなど、中東に対する強硬姿勢が顕著になってきた。そうした中、安倍総理はイランとの長年の友好関係を頼りに、イランの懐に飛び込んでいった。最高指導者ハメネイ氏やロウハニ大統領から「戦争は望んでいない」という言葉を引き出したが、訪問の最中にイランとおぼしき勢力が日本のタンカーを攻撃して、冷や水を浴びせてしまった。
総理のイラン訪問については様々な評価があるが、やはりアメリカ自身が関係改善に本気ではなかったこと、日本のスタンスがあまりにアメリカに寄りすぎていたことで、顕著な成果を挙げることはできなかった。厳しい中東の現状をあらためて痛感することになった。ところで、日本のエネルギー事情は、原発事故以来大変厳しく、中東諸国の石油に頼らざるを得ない状況が続いている。今回の襲撃があったホルムズ海峡は、まさに石油輸送の要であり、ここが閉鎖されれば日本にとって死活的な問題になる。ホルムズ海峡に接するイランに対しては、敢えてアメリカとの同盟関係を脇に置いてでも、独自路線で粘り強い交渉を続ける必要があるのではないか。
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