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2019-08-20 00:00
(連載2)第1回「欧州政策パネル」に参加して
河村 洋
外交評論家
第三はアメリカの内政および外交方針における、トランプ政権の「世界の民主主義の擁護者という立場の放棄」という可能性です。従来のアメリカはEUおよびNATOといった多国間枠組みをヨーロッパ民主主義のビルトイン・スタビライザーとして支援してきました。しかしトランプ政権はナショナリストの立場からブレグジットをけしかけながら、他方でEU離脱後のイギリスに対してはアメリカの保険業界の利益のためにNHS(国民保健サービス)を破棄させるよう促しています。
さらに問題視すべきは、ドナルド・トランプ大統領が任命したリチャード・グレネル駐独大使がヨーロッパ各地の極右を支援していることです。ドナルド・トランプ大統領による一連の行動はロシアの対欧戦略を後押しするようなものです。これまで民主主義国家として価値観を共有してきたアメリカとヨーロッパだけに、トランプ政権の外交方針は同盟国への背信行為とさえいえるでしょう。こうした米欧間の亀裂はもはや大西洋地域にとどまらず、世界の安全保障における最大の危機の一つだと思われます。
第四は、日本としてどのような欧州・大西洋戦略を立てるかです。安倍政権はインド・太平洋構想を推し進めていますが、欧州・大西洋戦略はこれと並ぶ外交の二本柱になり得るのではないかと考えています。日本はG7の一員であり、安全保障でNATOと協力を強化しているうえに、経済ではEUとの経済連携協定(EPA)を結ぶなど、ヨーロッパ情勢のステークホルダーでもあります。日本の対米外交は太平洋からの視点に偏りがちですが、「地球儀を俯瞰する外交」を掲げてリベラル民主主義による世界秩序を支持するならばアメリカの対ヨーロッパ外交にも多大な注意を払う必要があります。
また日露関係も大西洋から眺める必要があるでしょう。ヨーロッパでのロシアの行動を念頭に置いていれば、日本側が北方領土返還や中国の脅威への対処で相手側に誤った期待を抱くこともなかったと思われます。そして最後に、一帯一路政策でヨーロッパに進出してくる中国への対処も重要になってくると思われます。以上の論点は私の個人的関心から述べたことですが、これらが「欧州政策パネル」の方向性と整合していればと嬉しく思います。(おわり)
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