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2019-09-05 00:00
米トウモロコシ輸入拡大の先にくるものは何か
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「G7で批判集中 際立つ米国の孤立」というタイトルの外報記事が目についた。その内容は「先進7カ国首脳会議(G7サミット)の経済討議では、トランプ政権の保護主義や過熱する米中貿易摩擦に批判が集まり、米国の孤立が際立った。中国との報復関税の応酬が米経済に打撃を与え、来年の大統領選を見据えるトランプ氏にも焦りが募る。逆風の中、日米貿易協定の基本合意と日本によるトウモロコシ輸入拡大は『救いの一手』となった」(2019/08/26 時事通信)というものだ。こうした指摘が、第一義的にはドナルド・トランプという個人の個性に由来するのはもちろんである。
しかし、世界史的に見ればヘゲモニー国家アメリカの凋落、つまり第一次大戦後に始まり第二次世界大戦によって完成した「パックスアメリカーナ」の、ようやく始まった「終焉」こそが、アメリカ合衆国の「孤立」の根本的で深刻な要因ではないだろうか。そんな歴史的循環の中で日本の首相がトウモロコシを買ってやると言ったから「救い」だったとは、なんだか哀れをもよおす話ではある。しかし、思い起こせば戦後の数年間、米国による「ガリオア・エロア基金」による莫大な援助によって飢えをしのいだ我ら、当時に生きた日本人の一人としては、いまトウモロコシを買ってやるのは良い事のように思いもするのであるが……。
上の記事によれば、トランプ氏は「『本当に大きなトウモロコシ購入だ!農家にとって素晴らしい』とツイッターに投稿し、支持基盤である農家にアピールした」とある。よほどありがたかったのだろう。何しろ、米中西部の穀倉地帯で生産されるトウモロコシの最大の買い手である中国が報復関税を掛けたために、事実上、禁輸状態に陥っているからである。トランプ氏最大の票田が枯れては、来年の大統領選挙での勝ち目がない。それを日本が買ってやるというのだから、嬉しかったに違いない。かくて、我らはトランプ氏という歴史上最悪といっても過言ではない合衆国大統領の再選に手を貸す羽目になったのである。振り返れば、G7におけるトランプ氏の存在感は、見るに堪えないものだった。
この国際会議は、そもそもが世界の経済大国7か国が世界経済を円滑に進めるために話し合うというものであったのに、世界中で貿易戦争を引き起こす者が受け入れられるものではない。それが他ならぬトランプ氏なのだから、彼に浮かぶ瀬が有ろうはずはなかった。それを懲らしめずに救ったのが、我が安倍首相であった。これは褒められるべき行為か誹られるべき判断であったか。その評価は、間もなく発表される日米FTA協議の結果を見ないと何とも言えないが、例によって「地頭」に勝てない日本政府のこと、遺伝子組み換えトウモロコシだけではすまない「自動車」「牛肉」「コメ」などで、数々の「負け」を喫するのではないだろうか。東北、北海道の農業の未来が大いに心配だ。
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