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2019-09-10 00:00
道を外した国会議員も民心を映す鏡か
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「『NHKをぶっ壊す』、刺激的なキャッチフレーズを掲げ、7月の参院選で1議席を獲得した『NHKから国民を守る党』(N国)。参院議員となった立花孝志党首(52)は、次々と無所属議員らを勧誘し党勢拡大を図るとともに、N国を批判したタレントが生出演している放送局前に押しかけるなど、過激な言動で注目を集めている」(2019/09/04毎日新聞)。 この新聞記事には、「出演者がN国を『中傷』した番組のスポンサーだとして不買運動を呼びかけたものの、撤回。『崎陽軒のシウマイ』を食べる立花党首」という説明の付いた写真が添付されていた。横浜シューマイで有名な食品企業がその放送番組のスポンサーだったのであろうか。こういう「政党?」に200万もの票が集まったという。
たしかに近年のNHKのメディアとしての質の劣化、具体的な政治への公正な批判力の欠如、番組開発力の低下、特に大衆迎合姿勢と空虚さ、これらは大いに批判されるべきではある。とはいえ問題は、N国党のいうスクランブル化などでは断じてない。これが現代日本人の政治意識の紛れもない「現実」であるか。もはやこの国の時代状況は正真正銘の「末法時代」に突入したというべき事態だではないか。ここでいう「末法の時代」とは、宗教界において「教(仏陀の教え)・行(僧侶の修行)・信(人々の悟り)」のうち「行と信」がそれぞれ実行および実現されなくなった時代、つまり信仰形式だけが残っていて、もはや真の救済は得られないという時代のことである。「末世」とは釈尊入滅の2000年後と言われ、日本史上では西暦1052年をもって呼称されたのだから千年も前に「末法の世」になってはいた。
しかし、どうもこういう情報が頻々と寄せられてくると「末法の時代」がいよいよ本格的に深化し、現実化したとしか思えないのだ。この「党首」とやら、NHK批判だけかと思っていたら、自党の批判番組を放送した放送局に押しかけるは、その番組のスポンサー企業の商品に対して不買運動を呼びかける等々、種々雑多な暴挙に出ている。更には、昨日9日には、脅迫容疑で警視庁の任意聴取を受けたという。尋常一様ではない。先に北方四島旧島民らによる国後島への「ビザなし渡航」の折、この団長に「戦争しないとどうしようもなくないですか!」と発言した丸山穂高衆院議員(35)。彼は、この発言によって衆議院で全会一致の糾弾決議を受けているのだが、辞任も何のその。この「政党?」の副党首という重要ポストに就任しているという。加えて、何度も有ることは何度でもある道理。
この「議員」、今度は「竹島」について「戦争で取り返すしか仕方ない」とネットに投稿。これについても、上記党首殿は「問題提起であって憲法上も法律上もなんら問題ない。言論封殺の圧力には屈しない」と強がっているという。まさに世は「末法の時代」、それゆえに文字通りの「悪人正機」を地で行っているようだ。「善人なほもて往生を遂ぐ、況や悪人をや」(「歎異抄」)とは親鸞聖人のお言葉だが、今の世の「末世」状況は、親鸞聖人の時代から見たら数等倍の暗黒世界に迷い込んでいる。親鸞聖人はそれでもなお「悪人正機」をお取り下げにはならないのであろうか?彼らと彼らを選ぶ民情という現実を見ればもはやこの教えも限界のようにさえ見えるのであるが。
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