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2019-09-18 00:00
(連載2)他国も受入可能な「平和な国際環境」を
牛島 薫
非営利団体職員
米中関係を考えると、地政学的には依然として米国が有利な状況を維持している。中国は、経済的には米国に伍しつつあるとはいっても、軍事的には、相変わらず北京を始めとした主要都市が米軍の空爆圏内にある。逆に人民解放軍にとって米西海岸はとてもではないが近づけるものではない。この点、中国は勢力圏を押し広げ米軍を近づけまいとする新たな試みの1つとして南シナ海の軍事拠点化を成功させつつあるが、これは東南アジア諸国に対しては有効な取り組みとはいえ、対米戦略の観点からは中国が安心感を得られるようなものではない。
だからこそ、中国側に立ってみれば、「平和国際環境」の「構築」が必要だという思いも切実であろうことは理解できなくもない。しかしながら問題は、中国のそうした現状認識がどこまで妥当かということではないだろうか。というのも、米国は、軍事力だけではなく、価値や理念の次元で日韓比等の諸国に安心感を与えており、それぞれの国の自由と安全を担保しているからだ。中国の経済力をもってすれば、韓氏が述べるような「平和国際環境を形作る戦略的な能力」を、中国が獲得することは時間の問題である。
しかし中国が本当に米国と対等の地位を獲得するためには、他国を魅了するほどの「平和国際環境」をめぐる価値や理念を対外的に示すことが必要だ。つまり「平和国際環境」というものは、周辺国にとっても受入可能なものであるべきということだ。少なくとも日本からみて、現在、中国から発せられる「平和」をめぐるシグナルは、我々の共感を呼ぶものではない。むしろ、国際法などに照らしてみても、我々の不安を掻き立てることのほうが多いのではないか。これでは、中国のいう「平和国際環境」が「中国以外にとっての平和」を含むとどれだけの人を納得させられるだろうか。
むしろ中国は、今こそ、アジアに比肩するもののない地域大国として、日本やその他の諸国と相互に受入可能な「平和国際環境」のビジョンを模索し、その共有に向けた国際協調主義の道を進むべきではないだろうか。アジア地域にあっては、日韓比などの自由民主主義国家との共通のビジョンと信頼関係に基づいた「平和国際環境」が構築できれば、その地域内の大国である中国がそのリーダーシップを発揮することはむしろ望ましいことであろう。平和で安定した国際社会を実現するにあたって、中国がそのような偉業を成し遂げることができれば、アメリカにはなし得なかった特色あるアジア新時代を創出できるかもしれない。(おわり)
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