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2019-09-19 00:00
(連載2)日韓関係悪化はアメリカ弱体化の兆候である
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
このような日本の決定に対し、韓国内では、これは徴用工問題への日本の報復であり、韓国の主要産業となっている半導体製造などに打撃を与える行為として反発が起きました。そして韓国は、韓国における日本のホワイト国認定の解除と日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄という反撃にでました。韓国からの安全保障上重要な情報やデータが日本に入ってこないということになると、北朝鮮に関する情報やデータが直接入ってこないということになります。日韓双方と協定を結んでいる米国がいる限り、韓国から米国に提供された北朝鮮関連の情報やデータのうち、日本の安全保障に関連するものについては、米国は日本に提供するでしょうから、実質的な影響はないかもしれません。
しかし象徴的には日本にとっても衝撃となりました。日本側は貿易問題と安全保障問題は全くの別物だという立場で、韓国政府の行動を非難していますが、そもそも日本側の貿易管理強化は、対北朝鮮の懸念という安全保障上の理由から起きたもので、日本政府の行動こそは安全保障と貿易問題を同列に扱っています。さて、話の初めに紹介したように、クレモンス氏は、アメリカの存在感と影響力がしっかりとしていて、東アジアの安全保障にしっかり関与していたならば、今回のような日韓関係の悪化はなかっただろうと指摘しています。
「交渉の達人」ということで、アメリカ大統領になったドナルド・トランプ大統領ですが、たしかに、その外交政策はことごとくうまくいっていません。北朝鮮に関しても、トランプ大統領は、北朝鮮の金正恩委員長と、シンガポール、ハノイ、板門店と三度にわたり金委員長と会談を行いましたが、実質的には何も進んでいません。核兵器放棄も行われる兆候は見られません。ちなみにクレモンス氏は、米中貿易戦争についても、「1930年代のスムート・ホーリー関税法時代の悪夢」と表現しています。米中貿易戦争の主眼はファーウェイ(華為科技)の開発する5Gをめぐる争いという面がありますが、日韓貿易戦争については、ファーウェイとアメリカの間で板挟みになっているサムソンに対する日本からの圧力(アメリカからの依頼[命令]でしょうか)という面も否定できません。
いずれにせよ、北東アジア地域を一気に不安定にさせている米中貿易戦争と日韓貿易戦争ですが、こうした現状は、とどのつまり、アメリカの衰退の兆候であり、国際関係の構造が大きく変わる、転換の始まりということが言えるでしょう。そうした中で、日本はあまり大きな被害を受けないように、いきり立って対応するのではなく、「柳に風」と受け流すというくらいが良いのだろうと思います。クレモンス氏は、日韓関係について、ニッカ両政府が、対立がもたらす大きなリスクを認識し、対立を激化させないようにすべきだと結論づけていますが、米国が頼りにならない現下の北東アジア情勢の不透明性を考えれば、実に傾聴に値すべき意見だと思われます。(おわり)
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