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2019-09-26 00:00
日本の米トウモロコシ購入の背景
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
トランプ大統領は石油・天然ガス業界とエタノール業界の間で板挟みになっています。ことの発端は、トランプ大統領が環境保護局に行わせた、小規模石油精製業者に対してのガソリンにエタノールを混合する義務を免除する決定です。アメリカでは、ガソリンにエタノールを混合することが法律で義務化されていますが、今ではE-15といってエタノールが15%混合されているガソリンもあるそうです。このエタノール混合が負担であったことから、小規模石油精製業者は混合しなくても良いということになったのですが、これにエタノール業界とトウモロコシ農家が反発しました。これはまあ分かりますね。
エタノール製造業は、農業州で発展しています。エタノールの原料はトウモロコシなので、その生産地に近い場所にエタノール製造工場もあります。農業州は先の大統領選でトランプ大統領が押さえたのですが、エタノール業界団体、農業団体の指導者たちの一部が今年8月の集会で「投票したことを後悔している」と発言するほど激怒しました。一方の石油・天然ガス業界は、できればエタノール混合を止めて欲しいのですが、ジョージ・W・ブッシュ時代に石油依存からの脱却という大義名分でエタノール混合が義務化された経緯があるので、これを急に廃止することは難しいのです。それでスモールステップとして小規模業者のエタノール義務免除を何とか勝ち取ったということになります。
石油・天然ガス業界とエタノール業界の両方を満足させる解決策はなかなか見つかりそうにありません。石油・天然ガス業界はそこで、ガソリンのオクタン水準を上げる法案を応援しています。エタノールを混合しながらオクタン水準を上げることは可能だとしています。一方のエタノール業界はこの法案がエタノール混合義務付けの解除につながる可能性があるとして危機感を持っています。両者の隔たりは大きく、なかなか解決策は見つかりません。トランプ大統領はどっちつかずの態度を取っているので、業界同士の反目が高まっているのです。
トウモロコシ農家にとってはトウモロコシが売れさえすればよいということになりますから、エタノール製造に回る分が減るならば、他の販売先を見つければよいということになります。人口で言えば中国が有力な輸出先ですが、現在の米中貿易戦争でこれは難しいということになります。そこで、白羽の矢が立ったのが日本ということなのでしょう。アメリカの国内政治が日本に影響を及ぼす、だからアメリカ政治にも関心を持つ必要があるということが良く分かる事例です。
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