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2019-10-02 00:00
我が国の北朝鮮関連報道に思う
荒木 和博
拓殖大学教授・特定失踪者問題調査会代表
さる8月23日・24日に、海上保安庁の巡視船が北朝鮮の漁船から威嚇された事件についてですが、報道の扱いが小出しになっていたのが気になります。しかも、ニュースが流れたのは事件発生から20日ほどが経過した9月の中旬のことでした。大和堆で海保の巡視船が北朝鮮のボートから小銃を向けられて、日本政府は北京の大使館ルートを通じて「厳重に抗議した」とのこと。巡視船がボートの乗組員から小銃を向けられたのが24日、前日23日には水産庁の漁業取締船が銃は向けなかったものの、同じボートに接近されたそうです。
さて、「厳重に抗議」というのは具体的にどうしたのでしょうか。実効的に行ったのか甚だ疑問で、具体的な内容を知りたいものです。これに対して、「北朝鮮外務省報道官は、北朝鮮の『専属経済水域』に8月23、24日に『不法侵犯』した日本の海上保安庁の巡視船などを『自衛的措置によって追い払った』とし、『正々堂々たる主権行使だ』と主張」(9月17日付け『産経新聞』)したとのことですから、蛙の面に水だったのかもしれません。あと、ビデオでの映像も撮ってあるというのですから、それもぜひ公開して欲しいと思います。
そもそも20日あまり経ってから明らかになったということは、今も表に出されていない事件が起きているかもしれないわけですし、別の見方をすれば都合の悪いことは隠し通せることも意味しています。すべてを明らかにすることができないのは分かりますが、可能な限りの情報開示をしないと、社会全体の不信・不安につながります。今回は発表された限りでは、小銃を向けられただけということになっています。ひょっとしたら、そのまま隠し続けようと思っていたのに、本当は発砲されたところを、とりあえず向けられたことだけ発表したのかもしれません。
拉致問題や工作員事案などで、警察・海保・そして政府の発表にいかに情報操作が多いかを、私自身この20年余り散々痛感してきましたから、こうした発表についても、とても鵜呑みにすることはできません。ますます我々は国の言動に目を光らせなくてはいけませんし、メディア・リテラシーも高めていかなくてはならないでしょう。いずれにしても、これから北朝鮮情勢はさらにエスカレートすることは覚悟しておく必要がありますし、「備えあれ」という意味では、やがて小銃を持った人間が日本に上陸することも想定しておかなければいけません(実はもう入っているかもしれませんが)。とにかく「遺憾」の一言でごまかすのはよくない、と思います。
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