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2019-10-08 00:00
(連載2)米中貿易戦争は日本の対岸の火事にあらず
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
公定歩合の引き下げを行うことで株高を演出すれば、株式に連動している個人年金の運用成績を改善できるので、熱心に選挙に行く高齢者の票を獲得できるだろう。しかし、トランプ政権を誕生させた、貧しい人々にとって物価高は、株式市場からの恩恵は薄く、単純に増税と同じ影響を家計に受けることになる。また、共和党の支持基盤となっている(共和党の色である赤色からレッドステイト、赤い州)農業州では、対中輸出の減少(中国はアメリカ以外の南米やオーストラリアなどからの輸入を増やす)に対して不満が渦巻いている。
共和党はそもそも自由貿易を標榜している政党で、高関税や保護貿易は民主党の十八番だ。それが共和党から出ている大統領であるトランプ大統領が保護貿易を実施し、公共事業への投資を行おうとしているというのは、自家撞着といえよう。共和党主流派、エスタブリッシュメントからすれば、トランプ大統領は、理念的に相容れない邪魔な存在ということになる。
約1年後に大統領選挙が行われる。民主党では、今のところジョー・バイデン前副大統領が指名候補になると見られているが、これから何が起きるか分からない。トランプ大統領はどのような策を練って大統領選挙を迎えるかということになるが、最高の状態は、中東やアフガニスタンからの米軍の撤退もしくは削減、北朝鮮やイランとの交渉が進展、中国との貿易戦争が収束となり、アメリカ全体の景気が好調になっていることだ。これらが全てうまくいくわけがないので、どの要素がどれだけうまくいくのか、あるいはいかないのかで、大統領選挙の結果が左右されることになる。
トランプ大統領としては、中国が折れてくれるものとばかり思っていただろうが、大きく目論見が外れた。中国は、「チキンゲームに付き合ってやる。貿易相手は何もお前だけではない。そのために世界中に投資をしてきたんだ」という姿勢だ。トランプ大統領は中国を屈服させるどころか、いかに宥めて、外見上だけでもアメリカの勝利を演出できるかに努めている状態だ。アメリカのパワーの衰退とアメリカ国内と国際社会の不安定な状況、という大きな流れを掴んで、日本は衰退国家アメリカと勃興国家中国の間をうまく遊泳しなければ、アメリカの衰退に巻き込まれて一緒に沈むことになる。(おわり)
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