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2019-10-19 00:00
香港のデモは長期化が避けられない
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
例年、国慶節を迎える10月上旬は日本に「爆買い」中国人が山ほど来る。東京で言えば銀座や秋葉原に中国人が多く現れ、東京が北京のような感じになっていたであろう。しかし、いつもは、中国人観光客がらみの報道が多いこの時期にもかかわらず、今年は日本では香港の話でもちきりだ。香港政府やその背後にいる本土政府を擁護するが難しいテーマとなっており、中国共産党が嫌いな日本人の間では、良い批判材料となっているからというのもあるだろう。
考えてみれば「中国のデモ」というのは、そもそも共産党独裁の体制に対する反対運動ということになる。つまり「政権批判」にしかならず、それがそのまま「政局論」になるのではなく「国家批判」になる。それは、独裁体制下では避けられない。そして国家批判は、「政権を打倒する」か「自分が逮捕または鎮圧され、あるいは亡命」するか、そうでなければ悔いて共産党に三跪九叩頭の礼をするしかない。民主主義ではないということは「野党が存在しない」ということであり、批判はそのまま国家政府の否定になるのだ。
さて、今回高校生が実弾で討たれた。当然に10月1日以降、警察に対して行政が「実弾射撃の許可」をしたということになる。大人はある程度様子を見ながら行うし、若者でも2014年のデモに参加した人々は警察の威力を体験しているので実弾射撃も思案するだろうが、経験の浅い十代の若者はそうとは限らない。しかし、若者が撃たれると、その犠牲が「デモに対する共感」を生んでいることは、デモ隊に大きな勇気を与えている。他方で、共産党政府は、しかし、さらなる実弾射撃が不適正だと認めることはできない。独裁政治において、自分の出した命令が間違いとなれば、統治における上位の命令が全く下位に到達しないことになってしまう。そのために、統治の基本が崩れることになるのだ。法治国家ではないと、民主国家ではピンとこない統治上の葛藤が生じるのだ。
政府としてはここで収集がつかなくなるとまずいから「覆面禁止の緊急条例」という伝家の宝刀を抜くこととなったものの、政府が倒れることはまず考えられない状態だ。故に、今回のデモは長期化することが見える。他国がおおっぴらにデモを応援すれば内政干渉になってしまうし、裏を返せば共産党独裁体制を批判するも同然だから、香港のデモ隊を表向き支援することができないからだ。とはいえ、国際社会の批判の高まりや中国本土への飛び火を期待する向きも多いだろう。私のように共産主義を批判している人はそれで良いかもしれないが、皆さんはどのように考えるのであろうか。
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