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2019-10-18 00:00
(連載2)日本の「トロッコ問題」から目を逸らすな
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
日本でも、例えばエネルギー問題で同じような「トロッコ問題」がある。地球温暖化対策の主因として石炭や重油・天然ガスなどの火力発電が問題とされ、それはその通りなのだが、その対案として、「だからCO2を出さない原子力発電が良い」とする日本政府のような判断がある。現状再生可能エネルギーによる完全代替が不可能で、且つ発電を放棄することが社会的に考えられない以上、この二者択一は、何れを選ぶにせよ犠牲が出る「トロッコ問題」である。
火力発電によって温室効果ガスを排出し続けて緩慢たる死を選ぶのか、それとも原子力発電で使う核燃料の放射能に被曝しての死を選ぶのか、いずれ二者択一の転轍機操作を迫られている。いま、日本政治に目を向けてみれば、憲法「改正」問題が急を告げている。このまま、日米安保条約にすがり続けてアメリカが定める仮想敵に囲まれつつ生きるのか、それとも憲法を変えて積極的に米軍と共に戦場に立つ選択をするのか。
前者は線路に1人横たわるケースに相当し、後者は5人が寝転ぶ線路に該当しよう。こういう問いかけを避けて、もう一つ平和主義に徹するというカントやガンジーあるいは石橋湛山に学ぶ思考選択は思い浮かばないのか。他方で、AI技術の発達の中で、いま世界中でロボット技術開発が熾烈を極めている。ここでのアルゴリズムには、いたるところに「トロッコ問題」が待ち受けているのである。
義務教育段階では少々難解に過ぎるものの、高校生や大学生はもちろん、世の大人、わけても政治家にはこの倫理学問題について真剣に議論してもらいたい。さぼりにさぼった国会がようやく再開するという。国会議員諸氏こそいたるところに分岐している深刻な「トロッコ問題」について真剣に議論してもらいたい。これこそ、小泉進次郎の言を借りるなら今や最大限の「セクシー」な問題なのだから。(おわり)
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