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2007-08-03 00:00
安倍続投に疑問あり
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
参院選における自民大敗にもかかわらず安倍首相が続投するのは納得できない。参議院は、二院制議会民主主義において、大所高所から国策を論議すべき「良識の府」として創設されたもので、そのため任期も6年と長く解散もない。しかるに近年は政党政治に埋没し、衆議院落選組の敗者復活の場に成り下がり、第二衆議院と呼ばれ、廃止論も出ている。
有権者に責任はない。安倍首相は「私と小沢代表とどっちが首相にふさわしいか、国民の皆さんに選んでいただくのが今度の参院選だ」と訴えて、大敗したのだ。それだけでも退陣の理由になるではないか。国民に対する欺瞞である。
その後の報道によると、安倍氏は、自民が40議席を割ったら首相留任は困難とする党長老の意向に耳を貸さず、投票前から続投の決意を伝えていたという。10カ月前に圧倒的な人気を背景に党総裁、首相に選任されたのだという自負があるのだろうが、投票結果を待たずとも、その後の支持率は低下の一途を辿り、閣僚の失言、事務所経費問題などで次々にボロを出していたのだ。安倍氏は任命責任をもっと深刻に受け止めるべきだ。
外交・安保が全く争点にならなかったのも参議院の「堕落」を象徴しているが、安倍首相自身が「国のリーダー選択選挙だ」と有権者に迫った以上、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」のスローガンにも有権者はNOを突きつけた、すくなくとも「待った」をかけたと見るべきだ。象徴的なのが対北朝鮮政策だ。強硬策一点張りの対応は破綻し、拉致問題の「解決」の展望は全く見えてこないのが現状である。北京の6者協議でも日本の孤立が目立っている。
西岡力氏は、8月3日付の産経新聞「正論」欄で、北朝鮮人権法改正案が与野党の幅広い賛成で国会を通過したこと、大勝した民主党は拉致問題では自民党以上に強硬であること、拉致問題解決を一貫して訴えてきた中山恭子氏らが当選したことなどを挙げて、これらを安倍首相の対北政策が支持された論拠としているが、牽強付会とはこのことだ。拉致問題で強硬な民主党の大勝を民意による安倍支持の根拠にするなど噴飯ものである。
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