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2019-10-25 00:00
選挙資金の積み上げから読む米大統領選挙
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
アメリカ大統領選挙を選挙資金の面から見てみたい。アメリカ大統領選挙は2年近くのマラソン選挙である。そして、アメリカの政治家たちは言ってみれば舌先三寸で巨額のお金を集めるプロだ。こうした選挙戦を支える選挙資金の不足は、マラソン選手がスタミナ切れを起こすのと同じで、選挙戦撤退につながる。また、討論会に参加する条件として選挙資金を献金する人の数が設定されているので、幅広く献金を集めていなければ討論会にすら出られない。選挙資金は選挙戦を見ていく上で重要な要素なのである。そして、各候補者が集めた選挙資金の中には、自己資金や別の選挙の時に集めた資金も含まれている。例えば、サンダースやウォーレンは2018年の中間選挙で連邦上院議員選挙を戦って選挙資金を集め、その残りを大統領選挙に使っている。
一見して明らかなことは有力候補にはお金が集まりやすいということだ。支持率上位5名が献金額でも上位5名を形成している。面白いことに、バイデンは支持率1位であるが、選挙資金集めでは4位となっている。これは、米国の選挙では、選挙出馬を正式に発表し、連邦選挙管理委員会に届け出てからでなければ、正式に選挙資金の献金を受けられるようにならないからだ。つまり、出馬表明の時期の早い遅いが献金額に影響するということだ。彼が出馬表明をしたのが今年5月ということを考えると、実質的には1.5四半期しか資金集めをしていないことになり、額が劣るのはおかしくはない。むしろ月平均で割ればトップに躍り出ることを考えれば、支持率1位は伊達ではない。他方、サンダースやウォーレンの特徴は1件当たりの平均献金額が低く、草の根レヴェルの人々が献金をしていることを示している。両者が金融や石油といった分野の大企業からの献金を拒否しているため、他の候補のように平均が押し上がっていないこともある。
驚くのは、トランプ大統領の選挙資金の豊富さだ。前回の大統領選挙の残りがあるということもあるが、現職大統領は多くの献金を受けることを示している。トランプ大統領の場合は多くが小口献金で、これはつまりトランプ大統領の支持基盤がまだ崩れていないことを示唆している。米中貿易戦争である程度のところで妥結し、農産物の輸出が以前の状態に戻れば共和党が強い地方の州を落とすことはないだろう。中西部での決戦に向けて潤沢な資金を使ってどのような選挙運動を展開するかというところが焦点になる。
選挙資金から選挙を見てみれば、トランプ大統領が優位といって差し支えない。選対がどのように差配するかということが注目される。民主党側はこれから党の候補者指名ということになっていくが、バイデンが優位ということは変わらない。トランプ大統領とバイデンの戦いとなれば、決戦場は中西部ということになる。
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