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2019-11-04 00:00
見透かされつつあるトランプの交渉パターン
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
対中国、対イラン、対北朝鮮など、アメリカは国際的な諸問題に直面している。アメリカは、中国とは貿易戦争、イランと北朝鮮に対しては核開発、核兵器廃棄といった問題を抱えている。トランプ大統領は、相手に脅しをかけてみたり、調子の良いことを言ってみたりと様々なことをやっているが、ことごとく暗礁に乗り上げている。トランプ大統領にとっては、日本だけが唯一自分のいうことをほぼ受け入れてくれる国だ。防衛関連品を買えと言えば「はい、喜んで」と言い、トウモロコシを何とかしろと言えば、「是非買わせていただきます」と言う。
ところが世界各国はそうはいかない。トランプとトラブルを抱えている国は「トランプ大統領にはそもそも交渉術などない」と判断している。トランプ大統領は一代で今のトランプ・コーポレイションをここまでのグループにし、資産を築き上げた大富豪だ。一般的には、それはトランプ大統領の実力、特に交渉力のおかげだと考えられている。しかし、長年トランプ大統領と一緒に仕事をしていた人物の中にはそうではないと主張している人々もいる。
不動産業界でのトランプの交渉術は「棍棒で叩きまくる」ようなもので、一対一で脅しをかけまくるものだというのだ。ふつう交渉事というのは相手にも利益が出るように落としどころを探るものだ。「ウィン・ウィン」関係を成立させることが大事だからだ。しかし、トランプ大統領は「自分だけが勝つ、得をする」という考えだ。それはなぜかと問われた時に、「世界には無数の人間がいて、取引するのは1回限りだから」と答えたという。ただ、トランプにも弱点があって、相手が強硬だとわかると、にわかにお世辞を駆使することもあるということだ。
トランプは大統領になっても、脅しから入り、相手が強硬だとわかるとお世辞を駆使する、という交渉術を使い続けており、それが1つのパターンになっている。パターン化すると、相手はどう対処すればよいか分かる。だから放置され交渉が暗礁に乗り上げるのだ。トランプ大統領が当選して3年経った。最初は突拍子もないことをやるので、世界中の首脳が戦々恐々としていたが、だんだんパターンが見透かされて上手くあしらわれることが増えた。ただ、日本だけは、相変わらず、トランプ大統領と真正面から向き合い、その言うことを聞いているようだが、果たしてそれはどこまで考え抜かれた行動なのか、知りたいものである。
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