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2019-11-12 00:00
(連載2)米軍のバグダディ急襲が意味すること
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
トランプ大統領の発表では、作戦時の様子にも触れられていたが、非常に生々しい言葉遣いであった。また、バグダディと「犬」を結び付ける表現が複数回使われていた。バグダディは洞窟の中で犬に追い回された上に、「犬のようにクンクンと怯えて鳴」き「犬のように死んだ」とトランプ大統領は発言している。これは単にトランプ大統領独特の言語感覚から生まれた表現ということもあるだろうが、それだけではなく「バグダディは人間扱いするに値しない。だから裁判なんていう、しちめんどくさい手続きなしで殺してもいいんだ」という評価を聴衆に刷り込む意図があってのことだろう。
トランプ大統領は、ロシア、シリア、トルコに対して作戦上の協力を感謝し、クルド人勢力からは軍事上の協力はなかったが有益な情報提供があったことを認めた。ここからわかるのは、ロシア、シリア、トルコから軍事支援と情報提供があったということだ。2つの協力があったから謝意が表され、クルド人勢力に関しては情報提供があったことを認めるということになったのだと思う。
従って、今回の作戦はアメリカ軍単独ではなく、ロシア軍、シリア軍、トルコ軍の共同作戦であったことは明らかだ。そのうえで、3カ国はアメリカに華を持たせ、上記のバグダディの殺害が行われたのだ。よって、トランプ大統領は、ロシア、シリア、トルコに対して大きな恩義、借りを作ったといえるだろう。
米国は、ISISのカリスマ的指導者が文字通り消え去ったこの作戦によって、この地域からの米軍撤退を正当化しやすくなった。米軍が最後に華を持たせてもらったのも、出ていきやすくなる良い演出となった。また、作戦協力者にロシアが含まれているのは、この地域をロシアに任せるという米国の意思と読み取れ、アメリカの今作戦は、海外の難事に関わらず国内の問題解決を優先するという「アメリカ・ファースト」に適っているといえるだろう。今回のバグダディ殺害の件は、単なるテロリスト集団の指導者を暗殺したにとどまる話ではなく、地政学的な暗示も含んでいることは押さえておかねばなるまい。(おわり)
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