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2019-11-13 00:00
北方領土観光ツアーの迷走に日露交渉の限界を見る
飯島 一孝
ジャーナリスト
北方領土での日ロ共同経済活動のパイロット事業として初めて実施された日本人向け北方領土観光ツアーは11月2日に終了し、一行はチャーター船で根室港に戻った。当初の計画では、10月に6日間の日程で北方領土の国後・択捉の両島を回るはずだったが、ロシア側が直前に延期を要請したため、2週間以上延期されたうえ、日程も1日短縮された。さらに、旅行途中で荒天のため1日繰り上げられ、観光客は「択捉島の滞在が2時間弱で、本当に残念でした」と帰国後、毎日新聞に語っていた。どうしてこんなことになったのだろうか。この計画が決まったのは、6月29日の大阪での安倍首相とプーチン大統領との首脳会談でだった。
安倍首相は当初、この会談で北方領土の2島返還にメドをつけようと目論んでいたが、プーチン大統領は会談前から「(北方領土を日本に引き渡す)計画はない」とロシアのテレビで発言しており、はじめから解決するつもりはなかった。焦った日本側が、日露の共同経済活動の具体化として首脳会談の確認事項に急遽入れた計画だった。このため、日本外務省が10月7日にツアーの11日からの実施を発表したが、翌日になってロシア側が外交ルートを通じて延期を要請、10月30日からに大幅延期となった。この理由についてロシア側は公表していないが、政府内の合意が不十分だった可能性が高い。
外務省は乗り気でも、北方領土を管轄している省庁から横槍が入ったのではないだろうか。今回のツアー実施に関連して日本外務省は「共同経済活動が具体化した初めての試行事業で、今後に向けた大きな一歩だ」と、評価している。だが、ロシア側はこれまで実施している元島民や専門家らに限られる「ビザなし交流」に対して「冷戦時代の産物だ」と決めつけ、今の時代にふさわしい制度に改めるよう主張している。基本的に共同経済活動の前提になる「双方の法的立場を害さない特別な制度」で日露が合意できなければ、この活動は前に進めない状況になっているのだ。では、どうすれば問題が解決するのか。現時点では「特別な制度」を作るのは現実的ではない。
日本政府が日露平和条約交渉で北方領土の返還を要求しているのに対し、ロシア側は「平和条約交渉をしているが、領土交渉はしていない」という態度を変えていない以上、解決のしようがないのが実態だろう。現実的に考えれば、交渉は当分、冷却期間をおくしか方法がないのではないだろうか。安倍首相はいまだに北方領土問題の任期内解決を強調しているが、この際、国民に交渉の現状を明らかにし、民意を問うべきではないか。現状の説明がないまま、膠着状況が続くのは両国にとって不幸な事態である。プーチン大統領自身、支持率が低下し、レームダック化しつつあり、ロシアの世論を敵に回してまで日本に歩み寄ることはありえない。安倍首相もそろそろ腹を固める時ではないだろうか。
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