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2019-11-20 00:00
韓国による脱北者強制送還が意味すること
荒木 和博
拓殖大学教授
韓国の文在寅政権が11月7日、海上で拿捕していた北朝鮮船員2人を北朝鮮に強制送還しました。この韓国政府の処置に国際社会から非難が殺到したのですが、さすがに韓国内でも批判が高まっています。というのも、韓国政府が強制送還した根拠としたのが同僚の船員の大量殺人であるとのこと。もはやもっともらしい嘘もつけなくなってきたということでしょう。追放された2人を含む3人が他の船員16名を1人ずつ呼び出して殺したというのですが、あの木造船は構造上甲板の下に通路はなく、板で仕切られています。
したがって隣の部屋に行くためには一度甲板の上に上がらなければなりません。しかも15メートルの船の居室などたかが知れていて、16人詰め込むなどおそらく不可能です。殺人を犯したこと自体が嘘ではないかとすら思えます。こうなると、北朝鮮から「逃げた奴がいるから捕まえろ」と要求された韓国政府が亡命希望者を殺人犯だということにしてあわてて返してしまった、と解釈するのが自然でしょう。
韓国では北朝鮮の人間が自国にやってきた場合は関係機関の合同尋問チームを作って聞き取りを行うのが通常のやり方であり、仮に殺人の容疑者だとしても直ぐに返すなど本来はありえないことです。にもかかわらず、直近の例を見ると、去年12月のレーダー照射事件のときの木造船の船員、そして今年6月に韓国の日本海側に位置する束草(ソクチョ)市に来た木造船の船員のうちの帰国を望んだ(ことになっている)船員、どちらも直ぐに帰されました。完全に前政権までのやり方を無視し、ともかく北朝鮮に全力で忖度するというのが文在寅政権の有り様なのでしょう。
今韓国にとどまっている脱北者の間では北朝鮮に送還されるのではないかという恐怖を感じている人がいますが、何らかの言いがかりをつけて本来韓国内で保護されるべき脱北者が次々と北に送還されるような事態がいずれおきるかもしれません。文在寅政権のやっていることは、日韓関係も日米関係も破壊し、最後は韓国すらも破壊してしまうでしょう。それで北朝鮮に吸収されてもむしろ良いとすら思っているのではないでしょうか。日本は朴槿恵時代までの韓国を前例として相対してはいけないのでしょう。
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