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2007-08-08 00:00
テロ特措法、岐路に立つ民主党
鍋嶋敬三
評論家
参院選挙で第一党になった民主党が日米関係で岐路に立たされている。11月1日に期限が来るテロ対策特別措置法の延長問題が民主党の政権担当能力を試す最初の試金石だ。小沢一郎代表は選挙後の第一声でこれまで民主党が延長に反対してきたのに「賛成するわけにはいかない」と述べ、従来通り反対する姿勢を明らかにした。参院で過半数を失った与党が延長法案を国会に提出しても、参院で否決されれば成立しない。衆院で3分の2以上の勢力を持つ与党が再議決すれば成立するが、そのような手法は国民の納得を得るにはほど遠い。インド洋で米艦隊などへ自衛隊が後方支援するテロ特措法は日米同盟のシンボルにもなった。延長問題で国会が紛糾すれば「テロとの戦い」に腰が引けている日本の姿が世界に印象付けられて日本の国際的な立場が弱まるのは避けられない。
民主党は参院選挙の政権政策(マニフェスト)で「主体的な外交の確立」を掲げた。その内容は(1)外交の基盤として、相互信頼に基づいた対等な日米関係の構築、(2)自衛隊のイラク派遣を直ちに終了、(3)国連の平和維持活動に積極的に参加、(4)アジア諸国との信頼関係の構築――である。民主党はテロ特措法の延長にれまで3回とも反対した。延長反対と併せてイラクからの撤収は「相互信頼に基づいた日米関係」と論理的に矛盾するのに、説明はなされていない。ブッシュ米政権のアフガニスタン、イラク戦争を強く支持した小泉純一郎政権の下で日米同盟の強化が進行したが、それを裏打ちしたのが「テロ」と「イラク」の二つの特措法である。
北朝鮮の核をめぐる6カ国協議での日米連携、在日米軍再編に伴う海兵隊のグアム移転の合意などはこの同盟強化を担保として実った外交的成果だ。テロ特措法の下で日本は米英だけでなくドイツ、フランスなど11カ国と交換公文を締結し、自衛艦がインド洋上で燃料補給をしてきた。防衛省によるとパキスタンの軍艦は燃料のほぼ100%を日本の補給に頼っている。米国も民主党の動向に神経をとがらせ、シーファー駐日大使やネグロポンテ国務副長官らが民主党の姿勢転換に期待を表明した。
民主党の内情は前原誠司前代表がテロ特措法の延長が必要だと主張するように一枚岩ではない。もともと自民党から旧社会党出身者まで寄り合い所帯の民主党は国家の基本政策である憲法や安全保障、防衛政策で党内合意ができていない。臨時国会では延長に向けて修正など与野党折衝が予想される。しかし、参院選大勝の勢いに乗って対決姿勢を強める小沢民主党がこのまま「反対」で突っ走り、法案否決の事態になれば、日米関係に深刻な打撃になるのは明らかだ。民主党は参院の議長、議院運営委員長のポストを確保し、参院運営の主導権を握った。そのことは法案処理を通じて外交、安全保障政策の責任を担うことを意味する。責任政党としての自覚が何より大事である。
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