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2019-12-03 00:00
環境問題くらいは対米追随をやめよ
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
アメリカのトランプ大統領は、すでに2017年6月には「地球温暖化対策」のための国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱意向を明らかにしていた。しかし、おそらく世界中の誰一人として、いくらなんでもそんな無茶なことをするわけはない、と信じていたのではないだろうか。なにしろ20世紀の全期間を通じて世界に最も環境負荷を加えた国の1つであるアメリカ合衆国の最高責任者がそのような無思慮な行動を本当にとるわけが無いと、世界中の人々(スウェーデンのグレタ・トゥーンベリ氏は違うかもしれないが)が信じていたことであろう。
しかし、「トランプ米政権は(11月)4日、『パリ協定』離脱を国連に正式に通告した。協定発効から3年後との規定に基づき、正式な離脱通告が可能になった最初の日に手続きをした。実際の離脱確定は1年後の20年11月4日になる」(2019/11/05共同)。世界をリードしてきたアメリカ合衆国が掲げてきた「自由・独立・フロンティア」精神は、今日までの約100年間、専制と圧迫に苦しむ世界中の人々にとって憧れであり希望であった。そのアメリカが今やこういう指導者を得て道理を引っ込めて無理を通すようになった。しかも、この「無理」が、なにか高邁な政治目標ではなく、単にドナルド・トランプという一人の政治家の大統領に再選したいという個人的野心からきているのだから、本当に残念でならない。
現在、アメリカではあらゆる政治的課題について国論が二分しており、かつその分裂は今や修復不能なレベルにまで達してきている。環境問題はその課題の一つに過ぎない。パリ協定離脱はこうした傾向に拍車をかけることは間違いない。いずれにせよアメリカ国民は、テーマを問わず提示された極論のどちらかを選択せざるを得ず、米大統領選挙の投票結果もおそらく真っ二つに分かれることだろう。これは、投票総数の「半数プラス1票」の票を集めることで権力を獲得しようとするという「合理主義」といえる。「半数プラス1票」を集めるため、トランプ大統領は極端に合理的なスタンスをとっているのだ。「白か黒か」で単純化された「国益」の追求に走るこうした「アメリカファースト」の傾向は、「自国中心主義」として、いまや各国で模倣され、再生産され、世界を覆っている。本来過激なナショナリズムに対抗すべきアメリカが、こうした現状の元凶となっているのだから、失望せざるを得ない。
日本は戦後久しく、米国を「師」と仰ぎ、いわば米国の顔色をうかがいつつ自国の対外政策を展開してきた側面があったことは否めない。最近では、2018年にカナダで開かれたG7サミットで、プラスティックごみの海洋汚染をサミットの議題とするということで各国首脳がまとまろうとした中で、トランプ大統領がこれに反対すると、残る6首脳のうち安倍首相だけがトランプ大統領に同調したというケースが典型例である。最早、遅きに失したかもしれない地球温暖化対策ではあるが、日本として、せめて環境分野くらいでは独立自尊の精神にもとづき、ことの良し悪しを見定め、筋の通った対外政策を展開していきたいものである。
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