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2019-12-11 00:00
キッシンジャーのいない米中関係はどうなるか
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
アメリカが中国の台頭をここまでどうして許したのか、また、台頭を許しておきながら、なぜ紛争を仕掛けるのか、ということは考えてみれば不思議な話だ。中国のここまでの台頭をアメリカ側で許容してきたのはヘンリー・キッシンジャー元国務長官だと言われたりもしている。そのためにアメリカでは彼に対する恨み言も噴出していると聞く。しかし、リアリストであるキッシンジャーは、中国の伸長を受け入れつつ、中国とうまく付き合いながら、アメリカへのショックを少なくするというかたちで両国の間をうまく取り持ってきた。キッシンジャーは本年9月に続いて11月にも中国を訪問している。96歳になるキッシンジャーにとっては、十数時間の飛行機での移動は辛いことだろう。
それでも何とか耐えているのは、米中の間で小競り合いはあっても前面衝突には進ませないという信念があるからだろう。今回、中国でキッシンジャーは習近平国家主席と王岐山副主席と会談した。現在の中国は、習主席と王副主席のコンビで舵取りが行われている。キッシンジャーは米中が衝突してはいけないということを中国側に説き、アメリカに帰れば、おそらくドナルド・トランプ大統領か、ジャレッド・クシュナー上級顧問に会って訪中についての話をするだろう。実のところ、キッシンジャーは、米中両国において、米中貿易交渉の最前線にいるウィルバー・ロス商務長官やロバート・ライトハイザー米国通商代表よりも格上の扱いである。つまり、米中両国の首脳クラスに対して細かい話ではなく、大枠の話、グランドデザインを提示できる立場にある。
いずれにせよ、現在、米中は対等な交渉を行える関係にある。残念ながら日本はそうした立場にはない。私たちはそのことをまずは自覚しなければならない。したがって日本は、米中の動きを注視しながら、自国の利益がどこにあり、いかにそれを最大化できるかということを考えねばならない。かつては新年になると、日高義樹ハドソン研究所研究員が司会をするテレビの報道番組にキッシンジャーが出てきて、日本の重要性などを語ってくれていた。しかし、今やそのような発言は期待できない。言葉は悪いが、日本は米中間のパワーゲームの従属変数に過ぎない。したがって相当程度、両国の思惑に左右されるのは致し方ない。
ただし、何の考えもなく、ただ振り回され翻弄されるだけでは芸がない。日本としても、何とか自分たちの意思で動ける余地を最大化する、これが重要だ。そのためには現状をしっかり把握する必要がある。仮にキッシンジャーが亡くなった後、米中間を取り持つ人物は、“チャイニーズ”・ポールソンと呼ばれる、ハンク・ポールソン元財務長官ということになるだろうか。しかし、キッシンジャー並みの影響力を持ちうるのか、ということになるとはなはだ心もとない。キッシンジャー亡き後、米中両国は両国の関係に何らかの新たな安定装置を組み込む必要がある。そして、日本としてもそれなりの立ち位置と行動力を持つことが必要だし、可能なはずだ。
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