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2019-12-12 00:00
韓国・九龍浦の夕日に思う
荒木 和博
拓殖大学教授
11月下旬、韓国に行ってきました。朝鮮半島研究が専門の者としては、ときどき現地の空気を吸わないと実情がわからなくなってきます。北朝鮮はそういうわけにはいきませんが、韓国は沖縄に行くより近いですから。日本国内の報道だけ(韓国マスコミの報道も含め)をフォローしているだけでは、どうしても理解が現実とずれてくる、というのが正直なところです。
今回、日本海に面した浦項市に行く用事があったので、帰りの空き時間にバスで1時間ほどの九龍浦というところに行ってきました。ここは日本時代から漁業で栄えた町で、当時の通りが一部再現されていました。「日の出」という名の食堂なども営業していました。ドラマの舞台にもなったところで、観光客の姿が結構みられました。「近代歴史館」という、二階建ての日本家屋を記念館にしたものがあり、昔の内地人の生活用品の展示(なぜかダイヤル式の黒電話があったのがご愛嬌でしたが)や昔の街並みの地図などが展示してありました。この地の出身で引き揚げた人たちの「九龍浦会」というのがあるそうで、その人たちが当時を懐かしんで話すビデオも流されていました。韓国には日本時代の街並みを復元して観光資源にしているところが結構あります。韓国にあるこの手の施設には、難癖つけられたときの言い訳で「日帝の収奪が…」といったことが書かれていることも(それでも端のほうにですが)多いのですが、ここには見当たりませんでした。もっとも短時間の滞在だったので気づかなかったのかもしれませんが。ちなみにそのビデオには韓国のお年寄りで当時を懐かしむ話をしている場面もありました。
今回の訪韓で感じたのは前に比べると日本に対する評価に幅が出てきたというか、かつては日本を評価していてもそれを公然とは言いにくかったのが、それができるようになってきたということではないかと思います。日本でも訳本が出た『反日種族主義』は今も書店のベストセラーの棚にありました。ついでに言えば新海誠監督の『天気の子』とか『君の名は』などのアニメ作品もかなりスペースをとって並べられていました。
いずれにせよ、日本でもそうであるように、韓国の反日が今後ともなくなるわけでもなく、朝鮮半島がなくなるわけでもないので、いろいろと難しい地域ではありますが、永遠におつきあいはしていかないとなりません。一方的に相手に変わってもらうように期待していても仕方ないので、大事なことはこっちがしっかりしていることでしょう。韓国に限らず、日本が強くて堂々としていれば、厳しいときでもやせ我慢してがんばれば、外国に侮られるということは次第になくなっていくのではないでしょうか。拉致問題など、その最たるものでしょう。夕日傾く九龍浦の港で日本海を眺めながらそんなことを考えていました。
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